これまで受賞した人たちへのインタビュー
株式会社アゲハ
みんなで創るバッグブランド「Orihime」:http://www.e-orihime.com/
羽化したアゲハ 〜 研究活動から起業への道のり
「起業チャレンジ2008」の最優秀賞受賞を経て起業したアゲハの受賞者3人のうち、木下さんと田中さんにインタビューを行いました。インタビュアーはVentureNowの竹内社長です。「起業チャレンジ」主宰のスカイライトコンサルティングの小川も少し会話に入っています。
【後編】
ブラッシュアップミーティング中にどんどん起業準備を進めたアゲハ。製造したPCケースのサンプルをもって最終選考に臨みます。
竹内
アゲハさん的には、受賞までの期間は気が気じゃなかったんじゃないですか。
木下
いろいろやっちゃって、もう、取れるだろう、取るしかない!自信があったわけじゃなくて、やらなきゃ、やるべきって思ってとにかく猛スピードで進んでいました。取れなかったら、既に発生したコストに対しては自分の貯金から支払うしかないけど、そうしたら、会社は立ち上がらないかもしれないって思っていたので、最終プレゼンは勝負の日でした。
竹内
実際、最終プレゼンのときって手ごたえありました?
木下
どうですかね。発表までは、ドキドキしていましたけど、その日までにやるべきことを全部やって、その日は出し切る!っていうのを目標にしていたので、出し切ったという感じではあったと思います。今、その当時のプレゼンは恥ずかしすぎて見れないです(笑)
竹内
その当時プレゼンした内容と、現時点で描いているようなことって、変わってきてるんですか?
木下
そうですね。軸は変わってないです。それは幸せなことだと思ってます。
竹内
小川さん、よく同じこと(変わらない軸を持つべきということ)を言われますよね。
小川
変えちゃいけないわけじゃないと思うんですけど、軸がないと進みにくくなると思います。
木下
それを変えるとなると、何を軸にしていけばいいのか分からなくなって、つらいと思いますね。
木下
「ユーザーの声からヒット商品を継続的に生み出す仕組みを作る」っていうことですね。それに対して、このアプローチは難しかったってなっても、軸自体が変わらなければ、方向性が見えてくるというか。
ものづくりの現場とか見て、面白いんですけど、もったいないと感じることがいっぱいある。お客さんの顔は見えていないし、そこをネットの力を使って、お客さんの声を反映できるような仕組みを作りたいなと思っています。
竹内
なるほど。スカイライトの後に、一回増資してらっしゃるんですよね。
竹内
なるほど。これだけビジネスコンテストで目立った存在だと、他のベンチャーキャピタルとか、放っておかないんじゃないですか。
木下
お声がけいただくことはありますね。セプテーニさんに増資していただいたときは、どこかから増資してもらえないかなと思っていたので、自分からいろいろなVCさんにお話に行ったりとかもしていました。
木下
そうですね。一度決まりそうになった増資の話がいきなりなくなったりして、すごいテンパって、小川さんに相談させてもらったりとかしました。
竹内
こればっかりはタイミングがあるからね。どんないい会社でも。
小川
アゲハは特に製造業と見られる場合があるので、そうすると躊躇する人もいるんですよね。
竹内
でも、在庫をかかえてというビジネスモデルじゃないですよね。
木下
一部在庫もかかえていますね。カスタマイズは在庫なしの受注生産モデルなんですけど、そこから人気の商品を見出してマスプロダクトを作るっていうのがゴールなので、人気のものを定番化して在庫を持って、店頭でも販売する、そこでスケールさせるっていうモデルなんです。
それが、今は自社ブランドでやっているんですけど、今後はほかのメーカーさんに対して、企画コンサル的に、ユーザーの声を使ってもっと売れるデザインを提案するってなっていけば、在庫リスクは減っていくし、製造業の比率も減っていくんですけど、まずは自社で成功モデルを作ろうっていうところから始めたので、初めは「あーパソコンバッグ作ってる会社でしょ」っていう風に思われがちですね。実態を見てもそう、というところがあったので。
竹内
そのことをVCに説明するのも大変ですね。アゲハさんに近いビジネスモデルって、国内に限らず、海外でも、あるんですか?
田中
ありますね。エレファントデザインさんとか、tanomi.comとか、海外だとQuirky(クォーキー)というWebサービスだとか、Etsy(エッツィー)というハンドメイド商品を購入できるサイトだとか。
木下
あと@cosmeなんかも近いかもしれませんね。ユーザーの評価情報とオンラインショップを結びつけているところが。
田中
そのユーザーの声から売れる商品を作るというコンセプトは変わっていないですね。ただ、以前はユーザーさんにデザインそのものについて聞けば、いい答えが返ってくると思っていたけど、それでは商品企画に活かせるような答えは得られず・・・。じゃ、どういう聞き方をすれば、本当に、ユーザーさんたちの「おしい!」の声を聞けるのかなとか、特にそういうユーザーインターフェイスのところで仮説が鍛えられてきていると思っています。そういう意味で、「みんなの声でモノづくり」という軸は変わっていないですけど、もちろん進化してきていますね。
私たち自身の企画力も上がってきていると思います。ここだけユーザーさんに聞けばヒット商品ができるというところまで、あと一歩だなと思います。
小川
木下さんの修士論文のテーマはそれなんだよね。
木下
はい、そうです。私は研究とセットで、ずっとやってきて。
木下
「ニッチの壁を突破する、ユーザー参加型商品開発プラットフォームモデル構築」
木下
(笑)。これからも私は研究から離れずに、アカデミックな見地とかをどんどん生かして、わかったことを発信していきながら、「ユーザー参加型の商品開発」を広めていくというミッションを持っていきたいなと思ってます。
木下
はい、この間「ユーザー・イノベーション」の学会にMITに行ってきて、ビジネスモデルを立てる前から、ずっとバイブルのように読んでた論文を書いた教授と直接お話ししたりして、とてもモチベートされました!
木下
そうですね。世界中の研究者が集まって、たとえば、マスカスタマイゼーションの事例を500集めたという発表を聞いたりして、ビジネスにも生かせることが結構ありましたね。
木下
いや、まだまだなんですけど。英語にストレスを感じない会社になりたいと思って、いま英語サークルを会社に作って、週に1回海外のサービスやサイトの事例を発表してケース・ディスカッションするっていうのをやって、結構楽しくやってます。
竹内
ここまで話を聞いていると、この前、話を伺ったエニドアと印象がずいぶん違いますね。同じ「起業チャレンジ」受賞者でも、経緯とかパターンが違うなと思って。
小川
いろいろありますね。タイミングもあるし。全然違うように見えますけど、共通しているところは、応募した時点で「起業しよう」と決めてることですね。受賞せずにお金が入らなかったらどうしようって考えていたとしても、「やる」ってことは、どちらのチームも決めてる。あと、ブレない軸を持っていることも共通していますね。
木下
今までは、自社ブランドでやってきたんですけど、「ユーザーの声からヒット商品を作る仕組み」を作ったら、将来的には、それを既存のメーカーさんに提供していきたいと思っていました。最近は、その他社さんへの商品企画にもいろいろ力を入れています。
木下
あと、ユーザーの声にすぐに反応できる生産体制というか、生産技術とか生産工程が重要なんだなということを痛感しまして、ユーザーにとって魅力的なオプションを用意しなきゃいけないと突き詰めて考えると、その生産技術や工程が重要だということで、バッグ以外の商材でもユーザーの声にすぐ対応できるような製造設備を持っているところとか、製造機械を作っているメーカーさんだとかとお話させていただいたりだとか、提携の可能性を探ったりだとかをしています。
小川
そういったことは田中さんの修士論文のテーマなんだよね。
田中
そうですね。私はアパレル産業の生産体制や、マーチャンダイジングの戦略などがテーマだったので。アカデミックな力を、ビジネスにも活かすという観点から、社会に何かしら価値を提供できる。そういう会社であり続けられれば、と思っています。
竹内
なるほど。すばらしいですね。今後もがんばってください。
今日はありがとうございました。
- 2010/09/16:【前編】
- 2010/09/16:【後編】
木下 優子(キノシタ ユウコ)
株式会社アゲハ 代表取締役。慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、同大学大学
院の政策・メディア研究科への進学と同時に「株式会社アゲハ」を設立。現在、同大大学院政策・メディア研究科修士課程 2年在学中。実践と研究を通じて、ユーザーとメーカーを繋ぐ新たな商品企画プラットフォームを構築すべく、産学連携活動に奮闘している。
blog:http://ameblo.jp/yuu-orihime/
田中 里美(タナカ サトミ)
株式会社アゲハ 取締役。慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、同大学大学院の政策・メディア研究科への進学と同時に「株式会社アゲハ」を設立。ファッション産業における商品政策についての研究経験を活かし、同社で、戦略立案からマーケティング、デザインまで幅広い業務を担当。
blog:http://ameblo.jp/minonaru/