【第3回】「起業する」ということ
当然のことながら、起業するということは簡単なことではありません。特に難しいのは、いかに継続するか。応募プランの傾向から「起業する」ということについて話が展開し、起業に際して、スカイライトの提供するサポートの概要が語られます。
「製品を作ること」と「事業を起こすこと」
竹内
「起業チャレンジ」って募集するビジネスプランの分野は決まってるんですか。
羽物
応募内容は、「ITを使った」としてるんですが、実際は絞ってないです。昨年は「農業」とうテーマありました・・・が、ITを使ってたか。今の時代、ホームページは誰でも作れますから、「ホームページ使って、Webでビジネスします」って言えば、ITを使ったビジネスになっちゃうので。
竹内
トレンドってその時々によっていろいろあるじゃないですか。これまで3回やられて来て、応募されてくるビジネスプランに時代背景なんかはあったりしますか。最近だとソーシャルゲームとか、ツイッター系のサービスとか。4回目にそういうのが多いのか、分かんないですけど。
羽物
昨年は、「農業」とか、社会問題を解決したいというチームが多かったですね。一昨年は海外に向けたビジネスが多くて、身近な問題の解決というよりは、オープンな感じでビジネスしましょうというのが多かったですね。その前の第1回目は学生にしても、社会人にしても身近なテーマが多かったようです。
竹内
4回目はツイッターとか、iPhoneゲームとかなんですかね? どうなんですか、そういうビジネスプランが来たら審査通ります? あの手のジャンルはどういう風に考えられますか。
竹内
せっかくの起業チャレンジなので、事業アイデアというより、事業を創るっていうところで、マーケットから創っていくというようなプランの方がいいんですか?
羽物
そうですね。審査していて思うのは、「面白い製品を思いつきました」というのと「何らかの事業を起こしたいのです」というのは似て非なるものだなというのは、やってみて我々も気づいたところですね。
単一の製品で、「これが面白そうなので、作りたいです」というプランもあるんですけど、それでダメだった時どうするかということはみんな考えていなくて、「面白そう」で終わっているんですよね。それだと本当に会社にして、自分の人生の一期間をつぎ込むのに値するのかな、というのはちょっと疑問に思っちゃいますね。
それよりも、もっと根底に流れている大きなテーマがあって、「こういう大きなテーマの中で、ここから製品化していって、こういう風にやっていきたいのです」ってなると、ここ(その製品)がダメだったら、違うやり方で、このテーマと向かいあうんだろうなというのがイメージできるので、そうすると会社というのを興して、まさに「業を興す」、「創業する」というそんなイメージになるのかなと。
そういうチームに投資したいな、そんな大きいところを目指すチームを応援したいなとは思いますね。
竹内
じゃあ、「確かにそれ儲かりそうだね」というより、「儲かりそうか分かんないんだけどチャレンジしがいがあるね」ということですか。
羽物
そうですね。もちろん儲かってほしいですけどね。
竹内
そうですね。儲からないと続けられないですしね。
必要なときに、必要なだけの資金があることが大切
羽物
たとえば、300万を出しても、彼らの貯金がどれくらいあるか分からないですけど、いつかはなくなりますよね。1年とか経ってくると。
羽物
人によりますね。学生だとまだ、もったりしますね。副収入があるともうちょっともつかな。でもまあ、1年もするとだんだん苦しくなってきて、で、その時に何が達成されているのかによって、次の道が違ってくるかなって思います。
ちゃんと製品があって、ある程度サービスが開始しているんだけど売り上げが上がっていない、という状態なのか。その前の段階で模索しているのか。全然違いますよね。
当然、製品・サービスができて収益が上がり始めているなら(投資家などからの)評価もされやすいんですね。どうやって売っていくかという次の段階になっていくので。
金額については、1チームに最初から多額な投資が必要になることって少ないと思うんですよ。特に20代がチームでやる仕事で大金が必要なことって少ないと思うんですよね。最初300万でスタートして、ある程度やってくると、次に3000万のお金が必要な時期があって、そのときに3000万あることがいいことだと思います。
最初からその3000万があって、シェアの陣地を決めちゃってやるとすると、3000万のうちの2700万という、その段階で必要ではない無駄金のプールのためだけに、外部の資本部分が大きくなっちゃって、シェアがいびつになったりするわけですよ。それって適切なステップじゃないなあと我々は思っていて。
300万で彼らのシェアを大きくやって、成長して3000万の必要資金があるってなれば、1億くらいのマーケットキャップで評価できるということであれば、彼らのシェアを下げずに資金を呼び込めるかもしれないし、一番いい成長に合わせたステップかなと。
やってみないと分からないじゃないですか。若者の起業家もやってみたことないから分からないってことがたくさんあるので。「起業チャレンジ」はあくまで、きっかけのための資金なので、その段階まで行ってもらって、その次は自分たちで掴んでほしいなあというのが狙いではあります。
竹内
その「きっかけ」が、起業するときには一番大変なんですよね。ゼロから1にもっていくところが。
羽物
見てると、優秀賞に選ばれるチームは、おそらく我々が資金を出さなくても、いつかは自分たちでやっていたんだろうな、というチームですね。そのチームに、踏み出すきっかけを与えたという感じかなと思っています。半年とか1年後に、自分たちでどこからかお金をひっぱってきてやっていたんじゃないかなと思うようなチームが、「起業チャレンジ」を見て、そこに応募して、ブラッシュアップ・ミーティングを経て、「今がきっかけだ。やろう!」と思い切った。そういうことなのかなと思っています。
起業後のサポートについて
竹内
「起業チャレンジ」で受賞して、その後の成長のプロセスってあるわけじゃないですか。次のステージに到達するまでのサポートってされるんですか。
羽物
小川(スカイライト コンサルティングのシニアマネジャー)が定期的にミーティングをして、あーだこーだ悩みを聞いてあげるっていうことをしています。
これはいろんな考え方があると思うんですが、我々は、起業するチーム自身が、自分たちで歩んでほしいと基本的には思っているんですよ。ただ、知らないがゆえに右往左往するのはもったいないと思ってるんですよね。右往左往しないために、小川が助言してあげると。たとえば、「会社の登記するのってどうしたらいいでしょう」みたいなのって、本を見てやればいいんですけど、そういうのでもすごく時間かけちゃったりすると、「一ヶ月かかっちゃいました」なんて、もったいないじゃないですか。そういうのは「聞いてくれ」と。あるいは、「契約をどっかとしたいんだけど、よく分からないのです」って一から『六法』見てやってるようじゃ時間もかかっちゃうし、リスクもあるので、弁護士を紹介したり。そういうちょっとの近道みたいなのを用意はするんですけど、基本は自分たちで一から学んでほしいなと。
竹内
じゃああんまり「こうしなさい」というようなことはないんですね。
羽物
それもやってないですね。取締役会に入っても、入らなくても、支配しようという気はないので。
竹内
岐路に立った時に各社資金調達を考えだすと思うんですね。タイミングよくVCがつく場合、つかない場合があると思うんですが、スカイライトさんが追加で出資するということも考えられるんですか。
羽物
ありますね、いい事業であれば。そんなにお金があるわけじゃないですけど。
増資することになって少しシェアとるということになれば、また特にVCさんが入ってくる場合は、役員を入れてほしいという要望が多くなるので、社外役員という形で入ることもあるかもしれませんね。
取締役会の中が彼らとVCさんだけだと、なかなか会話が成り立たなかったり、アンバランスになるといけないので、創業時から見ていて、でも外部である立場がうまく入って発言するというのがいいかなと思います。
羽物 俊樹(ハブツ トシキ)
スカイライト コンサルティング株式会社 代表取締役。英治出版株式会社 社外取締役。
慶應義塾大学理工学研究科修士課程を修了。アンダーセン・コンサルティング(現・アクセンチュア)を経て、2000年、同志数名と共にビジネスコンサルティングを手がけるスカイライト コンサルティングを創業。現在では100名以上のコンサルタントが在籍し、事業領域を拡大している。同社でプロフェッショナル人材の育成に尽力し、訳書には『選ばれるプロフェッショナル』(2009年、英治出版)がある。週末には、地元小学校のサッカーチームの監督としても活躍。