【第2回】「起業チャレンジ」の特徴とは?
「起業チャレンジ」は、起業のためのビジネスプランコンテストです。最終審査通過後の賞金の授受も起業が前提となりますが、起業を前提しているからこその「起業チャレンジ」の特徴が語られます。
起業する際のオーナーシップの重要性
竹内
「起業チャレンジ」で気をつけられていることってありますか?
羽物
そうですね。「起業チャレンジ」で一番気をつけているのは、「資本構成」です。
応募してくれる人たちは、当然、大半は起業したことがない方ばかりで。半分くらいは学生さん。残り半分は社会人なんですけど、一企業に勤めてますって人ですね。当然、あまり資本政策は知らないし、上場するという実感はまだないわけですよ。
そうすると、こっちが「こういう風にしましょう」と言えば、「じゃそれで」って乗っかっちゃうかと思うんです。しかし、そこで決めちゃったことって後で覆せないことがたくさんあって、資本関係って言うのは後から変えようとすると、ものすごく大変ですよね。そこは非常に気を使っています。
「起業チャレンジ」はコンテスト形式なので、我々から起業資金という形で賞金を提供するわけですけど、提供したスカイライトがマジョリティをとってしまうと、せっかく起業しようとしている人のオーナーシップがなくなってしまう。我々は、彼らにオーナーシップをとってやってもらいたいと考えています。
先ほどのY Combinatorに話を戻すと、彼らは6〜8%しかシェアをとっていないようです。でも成功している。なるほどな、と。なので、応募してくれた彼らの報酬として、彼らのシェアを大きくしましょうと考えました。
我々は、そのあとも支援を行うので、我々も、上場するとか何かエクジットがあったときに、リターンがあるように少しはシェアをいただきます。ただ、我々はファンドでやっているわけではないので、スカイライト本体の業績とあまり影響関係がないように、15%以下としてます。
竹内
逆に、まだ何もない会社に対して、金額が決まっていて、3%ね、とかなると、企業価値が高められ過ぎてしまって、次のファイナンスがしんどかったりしますよね。
羽物
そうですね。
実際に、我々が300万出しました(シェアは)15%です、というと、「あ、いくらで評価したんですね」と投資やっている方は見ちゃうんですよ。それがあまり高すぎると、「何億で見たんですか!?」と言われてしまいます。ほんとは賞金なんですけどね。
事業プランを持ってきて、場合によってはソフトウェアのプロトタイプみたいなのを作ってくるチームも多いんですけど、それに対していくらで見たという見方をしてもらうといいかな、と。300万で、(シェアが)15%とすると、評価額だと2000万ですよね。そのくらいがいいバランスなのかな、と思います。
「起業チャレンジ」の審査プロセスで大切にするもの
竹内
応募してくる人が持っているのはアイデアだけだったりするわけですよね。
羽物
「起業チャレンジ」の特徴なんですが、提出されたアイデアをもとにきれいに書かれた事業計画を評価しますということではなく、実際に起業につなげてほしいというのが最大のコンセプトなんですね。
そのためには、ぱっと思いついたアイデアじゃなくて、実行可能なアイデアまで昇華してほしいわけです。
そのために、1ヶ月くらいかけてブラッシュアップ・ミーティングっていうのをやってます。その中で、彼ら自身がいろいろ気付いて成長していくっていうのも多くてですね、その過程で、どれくらい成長して、今後どうなって行けそうなのかというイメージを我々が持てるか、というのも大きな審査のポイントになっています。それで高めていって、この延長で、実際に会社をやりましょう、と。そういうやり方をしているっていうのが特徴的だと思います。
ビジネスプランコンテストだと、計画書づくりをしっかりやるコンテストやアイデアを評価するコンテストもあるんですが、「起業チャレンジ」は、計画書自体はどう書いてもいいですよ、と。いろいろな書式で出してくれていい。数字もあまり緻密に作りすぎても、まだ何もやってないので、あまり根拠がない。とすると、「どういう事業なのか」「なんでこれをやりたいのか」「どうしてこんなニーズがあると考えているのか」とか、そういうことをしっかり考えて、次にこれを実行しようと思っている。そんな実行につながる起業プランを評価してます。
竹内
投資家の人に聞くと、「投資先を決定するとき、最後は社長を見る」という意見も多く聞きますが。
羽物
そうですね、最後の最後は。ビジネスの先の結果というのは誰も分かるものじゃないですから。彼らが熱を持ってプレゼンしていれば、その熱に当てられることもあります。人を見て、その実行可能性みたいなものって「勘」ですかね。
竹内
分かります。「勘」と言っちゃうと「何だよー」って反論されそうですが、私が聞いた人の中では、「キャラ」と表現した人もいます。
羽物
ベンチャーの経営者の方々は、前向き思考で、上手くいかないことがあっても、へこたれず、次の行動に出ることのできる方が多いような気がします。
ブラッシュアップ・ミーティングでは、いろいろ問いかけをするようにしています。いろんな角度から問いかけをすると「これが抜けてた」「こんなこと気付かなかった」と応募者が気付くことがあります。それに対して前向きに動ける人は、次の週のミーティングでは、新たな考えを持ってきて、どんどん前に進んでる感があるんですね。それって、「キャラ」というか、自分の中で整理して昇華していく能力なのかな、と。
新しい事業をやるときって、最初っから成功が約束されているものってないわけなんで、やってみると良いところも悪いところもある。全部100点も全部0点もないはずなんですよ。「ダメかなー」と思っても0点はないし、「いけるんじゃないか」と思ってもいきなり100点はないし。20〜30点からスタートして、それを繰り返しいろいろと「ああした方がいい、こうした方がいい」と前向きに進んでいくことをやって、初めて、形になっていくんだろうなと思います。
そういう「キャラクター」というか行動特性を持っていて、適切なアイデアや市場性を見たいいアイデアがくっついていると、起業して、チャレンジするだけの価値があるんじゃないかと思います。
羽物 俊樹(ハブツ トシキ)
スカイライト コンサルティング株式会社 代表取締役。英治出版株式会社 社外取締役。
慶應義塾大学理工学研究科修士課程を修了。アンダーセン・コンサルティング(現・アクセンチュア)を経て、2000年、同志数名と共にビジネスコンサルティングを手がけるスカイライト コンサルティングを創業。現在では100名以上のコンサルタントが在籍し、事業領域を拡大している。同社でプロフェッショナル人材の育成に尽力し、訳書には『選ばれるプロフェッショナル』(2009年、英治出版)がある。週末には、地元小学校のサッカーチームの監督としても活躍。