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「ベンチャーキャピタルを入れてロクなことがない」孫泰蔵氏:第二回 SVS
November 30 , 2010 19:50 | Venture Now 編集部
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 スタートアップベンチャーのインキュベーション事業をおこなうサムライインキュベートは27日、スタートアップ・ベンチャー経営者の招待制カンファレンス「第二回 Samurai Venture Summit(以下SVS)」を開催した。


 6月に開催した第一回目のSVSはECナビの協力を受け、同社のオフィス内にある社内バー「AJITO」で開催。総勢約50名の起業家達が集まった。

 二回目となる今回は、代官山にあるビルを一日限定のSamuraiビルと称して一棟借り。前回よりもすべてにおいてスケールアップし、総勢 約200名を集めた。

 参加者の属性は、大手事業会社・メディア関係者 約15%。VC・インキュベーター関係者 約20%。残りの65%程度が起業前後のスタートアップを中心とした若手起業家らで占めた。

 今回もっとも注目を集めたカンファレンスは、孫泰蔵氏による「世界を狙う起業家に必要な心構えとは?」だった。


 所狭しと座布団が引き詰められた会場は超満員。若いスタートアップの起業家たちの熱気で溢れていた。

 予定より少し早く到着した孫泰蔵氏。パイプ椅子に腰かけ、手渡された拡声器を片手に「拡声器で喋るのは初めてです」と笑いながら自己紹介を終えると「何でもガンガン質問してください。ここにいらっしゃる方には超オフレコで何でもお話いたします」と興奮気味に語った。


起業だけがアントレプレヌールではない

 孫泰蔵氏はまず、「アントレプレヌールという言葉の新しい定義を提供したい」と切り出し、起業するということがどういうことかについて、「アントレプレヌール」という言葉の持つ意味を説明しながら持論を展開していった。


 「世の中がガラっと変わる瞬間がある。新しいテクノロジーが登場したとき。そして規制緩和がおこったとき。その価値(チャンス)にいち早く気づき、誰もまだやったことがないようなことをどうすれば実現できるのか。そして、とにかくそれをやってみようという行為。これそのものがアントレプレヌールだ」

 そして、「このアントレプレヌールという姿勢が今の世の中に求められている。会社を作ったりすることだけがアントレプレヌールではない」のだと、その重要性を説いた。

 もともとは実業家になるのは絶対に嫌だと思っていた孫泰蔵氏。ではなぜ起業に至ったか。そのエピソードに続く。


ある二人の起業家との出会いで人生が180度変わった

 今から15-16年前、孫泰蔵氏がまだ大学3年生だったころ。世の中はまさに超がつくほどの就職氷河期だった。国立大学の学生といえど、願書を出しても資料すらもらえない、そんな状況だったという。それでも当時の学生は何とか企業からの内定を取ろうと就職活動に頑張っていた。

 一方、孫泰蔵氏はというと何がしたいのか分からず、就職活動をするわけでもなく、悶々とした学生生活を送っていた。もちろん内定はゼロだ。

 1995年、そんな孫泰蔵氏の生き方を180度変える出会いがあった。ヤフー創業者のジェリー・ヤンとデビッド・ファイロだ。


 二人はこう話したという。「(ヤフーは)ニュートンの前でりんごを落とすような仕事」なんだと。

 つまり、もしニュートンの前でりんごが落ちなかったら、彼はたぶん素通りしてただろう。そうすると、万有引力の法則は思いつかなかっただろう。結果、科学の進化はもっと遅れていただろう、というのだ。

 これからインターネットは世界中に広がると確信していた二人。世界中の英知がインターネットに集まってくるが、その情報にたどりつけなければ意味がない。「これは人類の為にやらないといけないと思っている」と孫泰蔵氏に言ってのけたという。

 そんな二人は当時、「ヤフーワールドーツアー」と題して、世界中でヤフーを立ち上げるために世界各国を飛び回っていた。孫泰蔵氏は思った。

「ローリングストーンのようだ。自分もこんな生き方がしたい」


自分でもできるかもしれない

 ヤフー創業者のジェリー・ヤンとデビッド・ファイロの二人に出会ったきっかけは、やはり実兄の孫正義氏だ。

 当時、ヤフージャパンの立ち上げを目論んでいた同氏だが、ソフトバンクにインターネットに詳しい人がいなかった。

 「ぼくの学校にはめちゃくちゃいるよ」

 ジェリー・ヤンとデビッド・ファイロの二人に会わせて欲しいと思っていた孫泰蔵氏は、兄に迫った。孫正義氏は公私混同を嫌う。普通に会わせてと言っても無理なのはわかっていた。

 「何人くらい集めてこれる?」と孫正義氏。

 「100人くらい」と孫泰蔵氏。

 実際そのときはひとりくらいしか思い浮かばなかったそうだが、兄の性格を知っていた。こういうときは、おもいっきり大きく言うのが効果的だと。

 まんまと「来週、ジェリーが来るから」と二人に引き合わせてもらえることに成功した孫泰蔵氏だが、いざ実際に会ってみると、意外と自分たちと同じ普通の人間だったということに気がついた。

 「これだったら自分でもできるかもしれない」

 そして孫泰蔵氏は、ヤフージャパンの設立を手伝いたいと、彼らにいろいろ提案してみた。すると意外にも?

 「いいね。じゃ、まるごと頼むわ。会社作んなよ」


「Think Big」-人生はスーパーマリオ

 起業といっても、会社の作り方すらわからない。お金もない。兄の孫正義氏にも相談したが「自分で何とせい」だった。

 そして兄はこういった。

 「人生はスーパーマリオみたいなものだ」

 つまり、スーパーマリオで一面もクリアできないやつが、土管に入って4面へワープしてもすぐに死んでしまうだろうと。会社経営も同じで当時の孫泰蔵氏は一面レベル。その一面レベルの間に死ぬほど苦労して、すべての失敗を経験しろという教えだった。

 一面レベルであれば、会社経営でどんなに失敗しても絶対に死ぬことはない。でもそのプロセス、経験を経ないで大きくなってからだと、取り返しのつかない大失敗に対処できなくなる。

 「経験もお金も無かったが、失うものもなかった。そして、情熱と夢、時間があった」と当時の自分を振り返る。


 「Think Big」

 これは、海外の多くの著名人が口にするという言葉だと教えてくれた。

 「何が出来るかわからない。けど大きく考えること。若い起業家の武器は、失うものがなく、余計な経験がないことだ。できると思えば、ジョブズにもなれる。できないという保障はない」


一隅を照らすもの、これ国の宝なり -アントレプレヌールには「志」が重要

 孫泰蔵氏は、これまで多くのスタートアップの立ち上げを経験してきた。一方、数え切れないほどの失敗もしてきたという。

 冒頭で語った「アントレプレヌール」という「新しい何かを生み出すというのは大変」だとして、「不安だらけです。寝れないときもある」と話した。そういうとき、どうすれば楽観的になれるのか。それは「突き詰めること。やりつくすということ」だと語った。

 では、どうすれば突き詰めることができるのか。

 「自分の中に哲学がないとだめだ。そうじゃないとモチベーションが続かない。夢というのは自己満足だ。でも自己満足を究極まで突き詰めると、周りの人すべてが満足するようにという気持ちが自然にわきあがってくる。そして夢が志になる」

 アントレプレヌールには、志が重要だと説いた。


 「一隅を照らすもの、これ国の宝なり」

 これは天台宗を開いた伝教大師最澄の言葉。孫泰蔵氏が大好きだとして紹介してくれた。

 「みんなで一隅を照らしましょう。お金は後からついてくる。一隅を照らすために生きていこう。そしたら日本はよくなります」


ベンチャーキャピタルを入れてロクなことがない

 スピーチを終えた孫泰蔵氏には、スタートアップの起業家たちからさまざまな質問が飛び交った。

 これまでの失敗した事業と成功した事業の差は何?という質問には、「ひと言でいうと粘り腰の差」とし、「自分が失敗だと思わなければ失敗やない」という松下幸之助の言葉を引き合いに「諦めないこと」が重要だと話した。

 また、これまで多くの失敗を繰り返してきたという孫泰蔵氏に、ではそのファンディングなどはどうしてきたか?という質問に対しては、「お金が掛からないビジネスプランを作ること」だと答え、「いかにかお金を使わず、うまく周りを使うか」が大事で、孫正義氏はその天才だと話した。

 そして、そういうことを考えながらやっていくと「ときどきミラクルがおこる。そういうことをありとあらゆるところでやっていく」。いきなりファンディング云々でいろいろ考える前に、まず「自分たちの価値を作ることだ」と強調した。

 まさに前述した孫正義の教え「人生はスーパーマリオ」だ。1面もクリアできないプレイヤーが、大金を調達して次のステージへワープしても駄目ということ。何度失敗しても、まずは1面を自力でクリアできる実力、経験をちゃんと身に付けなさいということを教えてくれた。

 そして今、シリコンバレーの優秀なスタートアップはまさにそこへ原点回帰しているのだと孫泰蔵氏はいう。ベンチャーキャピタルからの投資をすべて断り、いかに金を掛けずにやるかを工夫して、「絶対自分たちで立ち上げていく、とやっている」と話し、さらにこう続けた。

 「(彼らは)ベンチャーキャピタルを入れてロクなことないということが分かったんです。それが最先端のスタートアップの姿」なのだと。とは言え、すかさず「レイターステージでは大事」とフォローする一面も。

 また、世界で活躍できるベンチャーとなるには?という質問には「最初から英語版のサービスを作ること」だと答えた。

 最後に主催者の榊原氏より、ウノウを買収した Zinga や Utream を日本に持ってきた際のエピソードについての質問がおこなわれたが、「(さすがに)話せない」と一蹴。セッションは終了した。


 確か冒頭で「超オフレコで何でもお話いたします」としていたので期待はしたが・・・。


第2回SamuraiVentureSummit
若き野心、世界へ from Samurai House〜
http://www.samurai-incubate.asia/venture.php

株式会社サムライインキュベート
http://www.samurai-incubate.asia/



【訂正】二段落目の文中で『社内バー「AJIT」』と表記しておりましたが、『社内バー「AJITO」』の誤りです。該当箇所を訂正の上、お詫びいたします(12/1)

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