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業界の成熟で高まる現場担当者の重要性と広がるネットワーク
2005/09/27 11:32 | 矢野壮一 | «前 後»
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業界動向

 ブロードバンド回線の普及/定額化、携帯電話の普及/高度化、決済インフラの整備、消費者のネットリテラシー向上など、この5年間でネットビジネスを取り巻く市場環境は大きく変化した。当時小さな組織体に過ぎなかったネットベンチャー企業も、M&Aによる統廃合、IPOによる資金調達を重ねることで、得意分野を活かし大きな会員を抱える既存企業との提携、協業などに乗り出している。同時にネットビジネスを遠巻きに見つめていた既存のメーカーや、大型店舗など各社も、それぞれネット関連の担当者を配置し、独自の人脈作りを活性化させている様子が伺える。


モバイルビジネスに関わる担当者のコミュニティ


 9月13日都内にて、携帯電話向けインターネットビジネス、いわゆるモバイルビジネスに関わる担当者に特化した交流イベントが開催された。その名も「体育会系モバイル部」。参加資格は、仕事上でモバイルに関わっていることが大原則だ。

 「ちょうど、2003年9月頃にある出版社の送別会があって、そこで山本さんと出会ったのがそもそものきっかけ。僕の場合はリクルートなのにモバイルだったし、山本さんはサイバード、その他にも其々まったく別の組織に属していながらモバイル関連のビジネスを担当している同世代と出会った」と話すのは、林正勝氏(株式会社リクルート 事業開発室)。同氏と、山本正憲氏(株式会社サイバード モバイルコンテンツ事業部)が発起人となり、同年10月に、第1回「体育会系モバイル部」が開催される。

 「自分達同世代には、組織内で特に権限があるわけではないし、それまではモバイル業界内で仕事上の付き合いはあっても、それぞれ閉じた範囲でしかなく、繋がりがなかった。でも、話しているうちに世界が広がっていくし、お互いがキーマンと思っている人が不思議なほど一致していたりする。そのうちキーマンだけを集めた会を開いてはどうかということになった」(山本氏)

 20人を予定していた会は、結局40人近くに膨れ上がった。それだけ、同世代のモバイル業界人は、仲間を欲していたのかもしれない。2人の発起人を含めた10人の世話人を決め、その中から2~3ヶ月に1度幹事として会を取り仕切ることになった。世話人も、大手携帯キャリアから、コンテンツメーカー、代理店など多岐にわたる。参加は「あくまでも個人の立場、ただし世話人は所属会社の広報に念のため許可を得ている」(山本氏)という。


今のビジネスに注力し、見据える5年先の仲間

 開始当初、情報交換・共有の目的で立ち上がったモバイル部のメーリングリストは、その後、参加者情報の共有・整理に活用されるようになった。この会は、あくまでも誰かの紹介でしか参加できないため、唯一、SNS「GREE」内にコミュニティがあるのみで、オフィシャルなWebサイトは無い。

 それでも、9回目となった今回の体育会系モバイル部は300人の参加者を集めた。その7割が20代半ばから30歳前半から20代半ばのいわゆる現場担当者。「広告代理店さんを探している」「ウチは代理店なので、レップの方と知り合えれば」と参加の目的も明確だ。モバイルという共通項の中で、築かれる現場担当者達のネットワークは、大きな力を発揮する。

 「スピードの速いモバイル業界に対して、予想が付かない事態はかならず発生する。そんなとき、助けてくれたり教えてくれたのは会社が違う『仲間』だったなんて、よくあること。仕事を通じて知り合ったクライアントや仲間を紹介し合うことの意味は大きい」(林氏)

 実際「もともと、仕事ベースで繋がっている仲間なので、より多くの仕事が生まれているし、中にはこのモバイル部を通じて独立し、仲間も集めたという友人もいる」(山本氏)という。

 とはいえ、両氏はこのモバイル部に限らず、それぞれの形で仲間を作り、互いに切磋琢磨していくべきだと主張する。林氏が、モバイル部のメーリングリストに投稿した挨拶文からも、その思いが伝わってくる。

 「モバイルの大きな可能性に対して会社も人材も足りていない、というのが業界の実態だと思う。限定されたパイを取り合うという意味で競合する前に、今は切磋琢磨するフェーズなんじゃないか、と。現時点でも海外に進出している企業は沢山あるが、これから5年もたたないうちに来るであろう世界のモバイルシーンの中心で、経営やマネジメントをしているのは今、現場にいる我々だと思います」(メール文より一部抜粋)

 ネットベンチャーといえど従業員数百人の上場企業が複数誕生すれば、5年前とは明らかに環境が異なる。携帯プロモーションの営業担当と巨大な店舗チェーンを展開する企業の広報担当者の間で、どんな提案をできるか。モバイルビジネスに関わる担当者の交流は、それほど活気に溢れていた。

継続した経営者コミュニティ

 体育会系モバイル部が開催された丁度5日前、ネットエイジグループが主催したネット業界の交流イベント「第5回 夏の終わりのネットビジネス業界パーティ」が開催された。138人を集めたこのイベントは、毎年8月下旬に開催され今年で5回目を迎える。

 もともと渋谷を中心とするベンチャーの生態系を目指した「ビットバレー」において、隔月開催されていた交流会からの流れを汲んでおり、それがクローズドなコミュニティとして形を変え存続している感がある。

 主催のネットエイジ代表西川潔氏も「日頃お世話になっている方々に、気軽に楽しんで頂ける場になれば」と、肩の力を抜く。

 もちろん、ネットエイジの新たな投資先をはじめ起業したばかりのベンチャー企業の経営者も集うが、投資家と新しいベンチャーが出会う場というより、ある程度面識をもった経営仲間同士の情報交換といった側面にシフトしている。当然集まる参加者も、上場を果たしたネットベンチャー企業、インターネット関連企業の経営者などが多い。投資される側から、投資先を探す側に回った企業だ。年齢層も、体育会系モバイル部から5歳~10歳程度上になるだろう。


5年分の業界成熟。2種類の「繋がり」が生みだす力

 5年前、ビットバレー構想で掲げていた概念に、SIG(Special Internet group)というのがあった。専門分野に細分化された情報を共有するコミュニティのことだ。当時はまだ、ネットビジネス、ITベンチャーに対して、地に足の着いていないビジネスだと不安視する声の方が強く、結論から言えば、細分化された研究会に近いコミュニティはあっても、仕事をベースにその担当者同士が結ばれていくという段階には達していなかった。

 しかしインターネット業界は、5年間で多くの雇用を生み出し、組織の一員としての若手が台頭し始めている。ビジネスとしてインターネットという単語が浸透し、それだけ業界が成熟し始めたといえるのかもしれない。

 これまでネット業界を牽引してきた経営者達は、その資金力とブランド力を背景に、大掛かりな企業との連携、買収、改革を推進する。そこで働く現場担当者は、より専門的な情報交換と人脈を通じ、切磋琢磨することで、業界内のキーマンとしての評価を高め、結果的に所属組織の大きな推進力となる。例えば小さなベンチャー企業と業界ビックネームが連携する裏では、そんな現場担当者同士の「繋がり」が大きな役割を果たす。

 今回取り上げた2つの交流会以外にも、業界内のコミュニティは無数に存在する。インターネットビジネスの啓蒙から生まれた経営者同士の繋がりと、目の前の仕事仲間から必要に迫られて広がった担当者同士の繋がり。その2つの「勢い」が、ネットビジネスの「今」を象徴しているように思えてならない。

GREE
http://www.gree.jp/


株式会社ネットエイジグループ
http://www.netage.co.jp/

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