メールメディアという言葉で思いつくのは何だろうか。ビジネスからプライベートまで毎日多くのメールがやり取りされているわけだが、コミュニケーションツールとしてのメールを別にすれば、プロモーションなどに活用されるメールメディアは大きく「メールマガジン系」とDM系の「ターゲティングメール(あるいはオプトインメール)」の2種類に大別される。
メールマガジン系とは、それ自体が読み物になっているメールメディアのこと。編集方針に沿った記事があり、広告はあくまでもそこに付加される形式で掲載される。具体的には、商業雑誌の広告のように記事の中に広告枠がある形で「ヘッダー5行広告」などの広告枠が用意されていたり、編集方針に添った形で広告記事(記事体広告)などの商品が用意されている。
商業ベースで広告を掲載するメールマガジンの多くは、Webサイトや雑誌、企業の顧客向け情報提供として配信されているか、会員を囲い込む目的で会報誌的に発行されることが多い。情報の内容で大別すると、機能型とも呼ばれる「プレゼント・懸賞型」「プレゼント加算型」。ニュースをメーンコンテンツにした「速報型」「情報収集型」。語学をはじめとする「学習型」。サークル活動のメール交換の場などの「参加型」などに分けられる(表2参照)。
図1に、サイバー・コミュニケーションズ発行の資料「CCI Media Sheet 2003 10-12」、まぐクリック発行の資料「まぐクリック Media Guide 2003年10月〜12月」から週1回以上の頻度で発行されている主要なメールマガジンについて抽出し、配信数とヘッダーの定価でグラフにまとめた。メールマガジンで最大規模の読者数を有するのは、メールマガジン配信スタンド(数多くの読者に対して時間を予約して配信できる機能やWebサイトからの登録・解除システムを提供しているサイト)「まぐまぐ」の会報誌。その後に大手ISP系会報誌、プレゼントや懸賞サイトの会報誌などが続く。専門誌的な読み物になると資料中最大規模だった「Biztech」をみても配信数100万通に満たない。そのかわり、読者層が明確なことから、定価が高く設定されていることがわかる。
メールマガジン系全般の特徴としては、配信規模が大きいため浅く広くユーザーに告知することができ、その分1通あたりの単価が安く設定されている点が挙げられる。また、専門誌など特に読み物として確立している媒体の場合、その読者層、編集方針で広告としての価値が異なること、記事体広告など媒体独自の言いまわしや見せ方で広告を掲載できることなどの点も考慮する必要がある。
※マウスオーバーで、詳細を表示します。(配信数(万人)/定価(万円)) ※グラフは「CCI Media Sheet 2003 10-12」、「まぐクリック Media Guide2003年10月〜12月」のデータをもとに作成 ※抽出は、週1回配信以上の頻度でヘッダー5行枠のある媒体(HTML除く)に限定 ※HTMLマガジンの定価は、ヘッダー5行枠に相当する枠で代用
ターゲティングメール(オプトインメール)とは、いわゆるダイレクトメール(DM)のeメール版のこと。広告枠としても、送付する1通のメールのほとんどすべてを広告原稿として利用できる。ただし、情報を受取ることを事前に承諾した人だけに配信され、事前に情報を受取るかどうかの確認を行わず、一方的に送り付けられる「スパムメール」や「迷惑メール」とは明確に区別される。不用な広告は迷惑メールへとつながるが、興味ある分野、購入の検討段階においては、店頭を回ってパンフレットを集める作業と同じく、重要な「情報源」としての価値を持つという発想が根底にある。
ターゲティングメールサービスを行っている企業の多くは、プレゼント・懸賞サイトもしくは、コミュニティサイトなどを運営している。つまり、懸賞やコミュニティサイトに登録する際に、アンケートなどに答えた情報を基に「ユーザー属性」「趣味趣向」など、「個人情報」のDB化を行い、同時に企業からの情報メールの送付を承諾してもらうわけだ。ユーザーにとっての目的は、懸賞やプレゼント、もしくはコミュニティサイトへの登録なのだが、付加価値として送られる興味ある分野の広告は、重要な「情報」としての価値を持つことになる。また、大抵の場合、ターゲティングメールを受信もしくは記載されたURLをクリックする度にポイントが蓄積される「受信インセンティブ」や「クリックインセンティブ」などと呼ばれる機能やゲームやくじ引きが行われる機能など様々なユーザーメリットが付与される。インセンティブの種類については(表3)を参照。
図2に、「CCI Media Sheet 2003 10-12」から配信可能人数と、1万人を対象にターゲティングメールを配信した場合の1通あたりの単価について、主要なターゲティングメール媒体をグラフにまとめてみた。配信可能人数は、絞り込む前の母数に該当し、この規模が大きいほど、同じ配信数に対して、様々な条件で絞込みを繰り返せる可能性が高まる。最大規模の「DEmail」をはじめ、大手ターゲティングメールの上位をプレゼント・懸賞系のサイトが占めていることがわかる。運営企業で見ると「ふくびき.com」「メールイン」「ポイントメール」の3媒体を運営するGMO M&Sが最大規模になる。
ターゲティングメール全般の特徴としては、ユーザー属性や趣味・趣向などから、配信先を絞り込んで直接メールを配信できる点が挙げられる。基本的にメールマガジンより、1通あたりの単価は高いが、メール送付やクリックによるユーザーメリット、絞込みによって、比較的小規模な配信でもサイトへの誘導など直接的な効果が期待できる。
図1と図2をみていると、プレゼント・懸賞系のサイトがターゲティングメールとメールマガジンの両方を発行していることに気が付く。実は、この2種類のメールメディアは、まったく別のものではなく、一つのデータベースから配信されているのだ。読者の属性・趣味趣向などを収集したデータベースを基に、ユーザー全体に対しては会員向けメールマガジン。受信承諾のフィルタリングをかけ、属性を絞込んだ該当者に対してはターゲティングメール。といった具合に「配信の方法に違いがある」と考えれば整理しやすい。コミュニティサイトやニュースサイトなどでも、同様仕組みでターゲティングメールを運営している企業は少なくない。図3としてプレゼント・懸賞系サイトのメールメディアをデータベースを中心に図化した。メールメディアの広告的要素とは直接つながらないが、媒体研究の一環として押さえておきたい概念だ。
広告媒体として活用されるメールメディアは、大きくメールマガジン、ターゲティングメールの2種類に大別されることがわかっただろうか。次回は具体的な媒体を例に挙げながらその実態を探っていく。