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インターネットビジネスの種

〜あたりまえの壊し方から
スカイライトコンサルティング株式会社 コンサルタント 小川育男
リーンスタートアップの系譜(後編)
July 05 , 2012 23:49 Ikuo Ogawa  
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 『Lean Startup』と『Running Lean』の2冊のリーン・スタートアップ本の参考文献から、リーン・スタートアップを読み解いていくという試み、後編である。前編では、顧客開発とリーン生産方式について概観して、リーン・スタートアップのエッセンスを取り出した。後編では、このエッセンスを実現していくためにキーとなったムーブメントに関して見ていこう。


アジャイル開発

 アジャイル開発関連の参考文献は、『Extreme Programming Explained』(邦訳『XPエクストリーム・プログラミング入門』)と『Lean Software Development』(邦訳『リーンソフトウエア開発』)が挙げられている。前者の原本初版は、1999年である。登場当時、ウォータホール型の開発が当たり前だった開発現場に衝撃的な影響を与えたアジャイル開発も、既に10数年を経ている。

 言うまでもないが、アジャイル開発は、ソフトウェア開発つまり製品(サービス)開発の一手法である。製品開発をいかに効率化するかという点では、リーン生産方式の手法を取り入れようという後者の考え方は自然な流れだといえる。特に、アジャイル開発では、テスト自動化やフレームワークによる共通化など、ルーティン的な作業を極力削ぎ落とし、製品(サービス)の実装に集中しようという意欲が強い。その点で、繰り返しの改善活動で無駄をなくしていくというリーン生産方式との相性は良いといえる。

 もうひとつ指摘しておくと、アジャイル開発が、ユースケースやストーリーカードなどのユーザ中心の要件定義手法を持っている点だ。ユーザが製品(サービス)をどう使うかという視点から一連の機能の定義を行い、それらの単位で開発を行っていくというやり方を取る。これは、顧客開発の考え方として、「顧客が求めるもの」をその利用状況から試行錯誤で探っていくというやり方との親和性が極めて高い。

 顧客開発という考え方とアジャイル開発という考え方。おそらくその発展過程で何らかの影響関係はあったのかもしれないが、これらの方向性が一致を見せている延長線上にリーン・スタートアップの考え方が形成されていることが分かる。


ビジネスモデルキャンバス

 最後のトピックはビジネスモデルキャンバスである。これは、『Running Lean』にしか出てこないが、『Business Model Generation』(邦訳『ビジネスモデル・ジェネレーション』)という本で解説されているビジネスモデルの立案・分析のためのフレームワークである。この本は、Business Model Generationというサイトでのオンラインコミュニティによって作られたというユニークな出自を持っている。そこでの議論を経て、Business Model Canvasというフレームワークが出来上がった。



 『Running Lean』では、このBusiness Model Canvasに修正を加え、Lean Canvasというフレームワークを解説している。ここでは細かく説明はしないが、これらのボックスを順番に検討していくことで、抜けもれなくビジネスモデルを検討していくことができる。というのも、『Running Lean』で主張されているのは、スタートアップが開発していくのは製品(サービス)ではなく、ビジネスモデルであるということである。従って、事業活動を継続していくにつれて、ビジネスモデルが洗練されるべきだということになる。



 これが、ここでトピックとして挙げた理由につながる。すなわち、リーン生産方式の特長のひとつとして、仮説やアクティビティを可視化していくことで組織的な改善が成し遂げられるということがあるが、Lean Canvasのようなフレームワークが一般化することで、組織的なビジネスモデルの改善が容易になると考えられる。

 既に『Running Lean』の著者のブログ等では、Lean Canvas以外のフレームワークも紹介されており、壁に貼って共有するようなポスターなども提供されている。これらの動きは、まさに日本の製造業のQCサークルで用いられたQC7つ道具(特性要因図やパレート図など)を彷彿させる。リーン生産方式から学ぼうとしているのだから当然のことではあるが、そのような活動がしっかり続いていくのであれば、数年後に蓄積されている経験はかなりのものになっていくだろう。


全体のまとめ

 以上、リーン・スタートアップというムーブメントに関して、『Lean Startup』および『Running Lean』という2つの本の参考文献から読み解くということを試みた。これまで、独立に、あるいは、相互に影響を与えつつ発生してきた流れが総合される形で現れてきている様子を感じていただけただろうか。

 参考文献から読み解くという設定のため、リーン・スタートアップが登場した背景については触れてきたが、それ自体が何かということはあまり触れていない。しかし、おそらく、『Lean Startup』や『Running Lean』を読んだからといってすぐに実践ができるわけでもないだろう。こういった登場の背景を踏まえつつ、試行錯誤で自分たちに合った実践の方法を築き上げていく、それがリーン・スタートアップの本質なのではないだろうか。


【本文中で言及した本】

Extreme Programming Explained: Embrace Change / Kent Beck
邦訳:XPエクストリーム・プログラミング入門―変化を受け入れる

Lean Software Development: An Agile Toolkit / Mary Poppendieck, Tom Poppendieck
邦訳:リーンソフトウエア開発〜アジャイル開発を実践する22の方法〜

Business Model Generation: A Handbook for Visionaries, Game Changers, and Challengers / Alexander Osterwalder, Yves Pigneur
邦訳:ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書

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