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インターネットビジネスの種

〜あたりまえの壊し方から
スカイライトコンサルティング株式会社 シニアマネジャー 小川育男
U2plus にみるソーシャルビジネスとソーシャルサービスの共通点
April 24 , 2012 18:56 Ikuo Ogawa  
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 ソーシャルビジネスとソーシャルサービス。似たような単語だが、かなり違う意味を担わされている。

 ソーシャルビジネスは、社会起業家(social entrepreneur)が起こす事業のことを指す。社会起業家というのは、もともとイギリスで発祥した考え方らしいが、ビジネス的な手法を用いて社会問題の解決を志す起業家のことだ。ただ、日本だと起業家としての営利性より、社会的問題解決の非営利性の方が強調され、NPOとして活動している活動家を指すことが多いように感じる。

 さて、もうひとつのソーシャルサービスだが、こちらは Facebookなどに代表されるように、何らかの情報をシェアし、ユーザ間のコラボレーションを促進するようなサービスであり、これまでにない新たなライフスタイルを提案するサービスということになるだろう。ソーシャルサービスと銘打ったサービスは、枚挙に暇なく、日々増えていると言っていいくらい多くなっている。


片や、社会的問題解決母体としてのソーシャルビジネス。片や、新たなライフスタイルを標榜するソーシャルサービス。これらの共通点は何だろう?そもそも、”ソーシャル”という単語が頭についているだけで、共通点などないまったく別々のこと事柄を指すものなのだろうか?

 今回は、ソーシャルビジネスとソーシャルサービスを融合させたような「U2plus」というスタートアップのサービスを通して、それらの単語の共通点に関して考えてみたい。



ソーシャルベンチャー U2plus とは

 まず、最初に。U2plusは、筆者の主宰する「起業チャレンジ」というビジネスプランコンテストを経て起業した会社であり、筆者も継続して支援を行っていることをおことわりしておく。

 U2plusは、うつ病を患っている人に対して、認知行動療法という心理療法をWebを通して提供しようというサービスである。認知行動療法に基づき、3つの機能を提供している。

 ひとつは、楽しいこと、できたことを日々つぶやく仕組みの「Fun Can」。Twitterと似ているが、投稿者のつぶやきに対しては、いいね!とか、やりたい!などの反応をすることはできるが、コメントすることはできない。

 つぎは、自分の落ち込むパターンを自分で記述してみるという「U2サイクル」。自分の思考を客観化することを狙っている。最後はネガティブになりがちな自分の考え方に対して、別の考え方もあるということを自分で気づけるようになるための「コラム」だ。登録しているセラピストからコメントをもらえる場合もある。

 ソーシャルベンチャーであるのは、うつ病の蔓延(まんえん)という大きな社会問題の解決のために、ビジネスという形態で一石を投じようとしていることで分かるだろう。また、ソーシャルサービスであるのは、基本的には参加者同士のやり取りがサービスの要であり、それぞれの考え方をシェアすることで、認知行動療法を継続できるようにするということで示されていると言えるだろう。

 これだけなら、単にソーシャルサービス的手法を用いたソーシャルビジネスであるというのに過ぎない。ここで、もう一歩進んで、ソーシャルビジネスに含まれるソーシャルサービス的発想について考えてみよう。


ソーシャルビジネスに潜むソーシャルサービス的発想

 ソーシャルビジネスが解決するという社会的な問題というのは、いろいろなステークホルダーがもつれあった構造的な問題となっている場合が多い。構造的な問題を解きほぐすには、ひとつの視点から中央集権的なプランニングにより解決するのは効果が薄い、あるいは持続的でないことが多い。同時多発的に多様な人たちが共通の理解のもとに問題解決に参加することが持続的な解決につながるといえるだろう。

 うつ病の蔓延ということを例にとろう。うつ病が病気であるのであれば、本来は医療の問題である。そして、認知行動療法が効果的であるなら、医師がそれを提供すべきだ。だが、医師ひとりが受け持っているうつ病患者数は多く、時間のかかる認知行動療法の提供は困難である。そもそも認知行動療法を提供できる医師の数も増えない。

 このため、うつ病の治療は投薬主体になっており、それ以外の療法の患者もしくはその周囲への認知が促されない。日本ではセラピストの役割も限定的であり、セラピストの数も増えていない。うつ病患者本人は、その特性上、自分の症状の説明などの行動が著しく制限されるのに対し、その周囲への情報源はかなり限られている。そのため、患者は孤立し、ますます症状は悪化するということになる。

 これは、単に医療政策の不作為を非難してどうなる問題でもない。何らかのプラットフォームに多くの人が参加し、つながっていき、うつ病にかかってしまった人たちの考え方や接し方などの情報をシェアし、アドバイスなどのコラボレーションを推進していく、そういった動きが解決の糸口になっていくはずである。

 いま、お気づきになっただろうか。多くの人が情報をシェアし、コラボレーションを推進する。まさに、ソーシャルサービスの発想が、ソーシャルビジネスにはあるべきなのである。そもそも普及しなければ、ある程度以上の人を巻き込むことがなされなければ、社会問題の解決には至らない。そうであれば、ソーシャルビジネスは、ソーシャルサービスの発想を十分に理解すべきなのである。

 もちろん、逆もある。繰り返しになるが、ソーシャルサービスは、多くの人が情報をシェアし、コラボレーションを推進する。そのエッセンスをうまく仕立てあげれば、社会的な問題の解決に有効に作用する可能性が高いということだ。


提供するだけでなく、享受するだけでなく

 さらに、もう一歩進もう。U2plusのファウンダーは、自他ともに認めるうつ病患者だ。うつ病の彼がうつ病の人たちのためのサービスを提供する。さらに、U2plusを経てうつ病を克服した人たちが出てくれば、彼らは認知行動療法に習熟した人たちであると言えるだろう。

 それは、U2plus上で他の人にアドバイスをすることができるということを意味する。確かに U2plusというサービスを始めたのは何人かのファウンダーであるが、サービスとしては、そこに参加しているユーザが育てていくものである。この考え方は、ソーシャルサービスを運営している人なら強く意識しているといってよいだろう。

 そして、この発想も、ソーシャルビジネスにも必要とされることであるはずだ。提供者が一方的にサービスを供給するのではなく、ユーザも参加して、ユーザが他のユーザにサービスを提供し、提供者は場を提供するという発想。こうすることで、社会的問題解決の手段がより深く広く浸透していくことになるといえるのではないだろか。


 ソーシャルビジネスとソーシャルサービス。このように考えてくると、似ているだけで意味が隔たっているように思えたのが、意外に共通点を持っているように見えてこないだろうか。こんな観点で、もういちどサービスを見直してみると、意外な応用範囲が広がって見えるかもしれない。

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