Home - Column -  インターネットビジネスの種 : Instagramの成功要因 ― 「全部取っ払ってしまった」

インターネットビジネスの種

〜あたりまえの壊し方から
スカイライトコンサルティング株式会社 シニアマネジャー 小川育男
Instagramの成功要因 ― 「全部取っ払ってしまった」
April 12 , 2012 14:49 Ikuo Ogawa  
このエントリーをはてなブックマークに追加
[PR]

 Instagramが Facebookに買収された。買収額は約10億ドルといわれており、話題を呼んでいる。買収の詳細や今後の行方などは、数々の記事が出ているので、そちらに任せるとして、ここでは、数多あるiPhoneアプリの中で、Instagramのサービスがこれだけ突出したのはなぜなのか?ということを考えてみたい。



http://instagr.am/


Instagramの成功要因はSimplification?

 Instagramのユーザが100万人に達したのは、リリースから3カ月後であり、その1カ月後には200万人となったという。立ち上がりの成長スピードとしては、FacebookやTwitterをしのいだとのこと。現在は、Android版もリリースされ、ユーザ数は5,000万人に達するそうだ。

 順風満帆で成長してきた感のある Instagramだが、当初から順調なわけではなかったらしい。Instagramの前身は、「Burbn」というサービスだった。まだ、シードマネーが入る以前である。Burbnは、HTML5で作られており、盛りだくさんな機能だったという。「Quora」での投稿で、Instagram ファウンダー兼CEOのKevin Systromが書いているエントリを引用しよう。


-----------
 We actually got an entire version of Burbn done as an iPhone app, but it felt cluttered, and overrun with features. It was really difficult to decide to start from scratch, but we went out on a limb, and basically cut everything in the Burbn app except for its photo, comment, and like capabilities. What remained was Instagram.

 (HTML5だったものを作り変えるにあたって)当初はiPhoneアプリとしてBurbnのフルバージョンを作ろうと思ったが、それはとっ散らかっており、盛りだくさん過ぎるように感じた。スクラッチから始めると決めるのはほんとに難しかったが、リスクを覚悟で写真とコメント、Like機能を除いて全部取っ払ってしまった。そうやって残ったのがInstagramだった。(以上、筆者による意訳)
-----------
http://www.quora.com/Instagram/What-is-the-genesis-of-Instagram


 これが書かれたのが2010年8月。この約半年後に、SystromはFastCompanyのインタビューで次のような教訓を引き出している。


-----------
 In the mobile context, you need to explain what you do in 30 seconds or less because people move on to the next shiny object. There are so many apps and people are vying for your attention on the go. It's the one context in which you've got lots and lots of other stuff going on. You're not sitting in front of a computer; you're at a bus stop or in a meeting.

 モバイル上では、あなたのアプリを30秒程度で説明しなければならない。そうしなければユーザは次の魅力的なものに移って行ってしまうだろう。あまりにもたくさんのアプリがあり、ユーザの気を引こうと絶えず競っている。しかも、それは他のさまざまなことが行われている状況で、である。ユーザは、コンピュータの前に座っているというのではなく、バス停にいるのかもしれないし、ミーティング中なのかもしれないのだ。(以上、筆者による意訳)
-----------
http://www.fastcompany.com/1730967/instagram-founder-kevin-systrom-30-second-rule-app-success


 つまり、Instagramは極限まで機能を削り、「30秒程度」でそれが何かわかるようにした。このやり方は、Simplification (シンプル化)と呼ばれることもある。これにより、ユーザに即座に理解してもらえるようになり、人気を博することができたというわけだ。

 これ自体は間違っていないと思う。シンプルなものは分かりやすい。分かりやすいから使ってもらいやすい。シンプルなロジックだ。

 でも、ちょっと立ち止まろう。シンプルなものは分かりやすいと書いた。でも、そこでいう「シンプルなもの」とは何を指しているのか?ユーザが分かりやすいと思って、「分かったこと」は何だったんだろう?


Instagramの古さと新しさ

 結論から言ってしまうと、それは、おそらく「写真を撮って、他の人と共有すると楽しい」ということだったのではないだろうか。

 「写真を撮って、他の人と共有する」ということであれば、写真の発明以来、延々と続けられてきた。旅行から帰ってきて、アルバムを作って友人と共有したという経験がある人は多いだろう。それ自体は何ら珍しくないし、新しくもない。

 Instagramが伝えたのは、この「共有する」というアクションが、ものすごく簡単にできるということ、そして、「共有する」ときにその阻害要因となる、見栄えの悪さを、これもものすごく簡単に除外できるということだった。

 何をあたりまえのことをクドクドと書いているのかと思われるだろうか。

 ここで気を付けてほしいのは、Instagramは「新しくない」ということだ。正確に書けば、Instagramが提供している経験は、その形式だけを捉えれば、なんら新しくない。いままで多くの人がやってきたことだ。ただ、その経験を為すときの状況の変化を捉え、その状況の変化を最も効果的に伝える機能に絞ってサービスを整え、その状況の変化を伝えた。これが「新しい」のだと思う。

 具体的に言えば、あなたの手元にiPhoneがあり、SNSで友人と情報共有する場がある。いままでアルバムで共有してきた状況は大きく変わり、撮影の仕方、共有の仕方が大きく変わるんですよ。これが、Instagramが「30秒程度」で伝えた内容だ。

 人が望むことや習慣は、そうそう大きくは変わらない。もちろん、長い目でみれば徐々に変わっていくのだろうが、劇的に変わったと見えるのは、ツールの変化による量的変化であることも多い。「写真を撮って、他の人と共有する」ということだって、もう一歩遡れば、「人や出来事を絵として記録し、共有する」という職業画家の仕事になる。つまり、延々と望まれてきたことだといえる。

 しかし、量的変化は侮れない。Instagramが出て、5,000万もの人が共有手段を手にしたのだ。手元に数字はないが、アルバムで写真を共有してた頃とは比べ物にならないくらいたくさんの写真が共有されていることだろう。すなわち、望まれていることは変わっていないかもしれないが、それを実現するための手段は大きく変わっていき、それを実現できる人の数は増えたと言える。


Instagramが伝えたメッセージ

 まとめよう。Instagramが伝えたのは、「写真を撮って、他の人と共有すると楽しい」というメッセージだった。そのシンプルなメッセージに、ユーザの置かれている状況が変化しているということを付け加えた。このことが核になっていたがゆえに、シンプルに機能を絞り込むことができた。そして、そのメッセージ+状況の変化を「30秒程度」で伝えることができたと考えることができるのである。

 自分たちが提供しようとしているものがフォーカスしている、ユーザの望み、習慣は何で、それを成し遂げているユーザの状況はどう変化してきているのか?これをしっかりとらえ、そこに向かって機能を研ぎ澄ます。この作業があって、はじめて「30秒程度」の説明が生きてくる。

 Instagramの成功の要因はそんなところにあったのではないだろうか。

関連記事 more...
この記事へのコメント
Venture Nowをメールで購読することができます。未上場ベンチャー企業の各種M&A、ファイナンス情報や新サービス・テクノロジーの発表などといった最新ニュースを2回/日配信しています
メールサービスのご案内・登録情報の変更・解除等は こちらをご覧ください
Home - Column - インターネットビジネスの種 : Instagramの成功要因 ― 「全部取っ払ってしまった」
VentureNow に掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。   
| サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク | 広告掲載 |
Copyright 2014 VentureNow . All rights reserved.No reproduction or republication without written permission.