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Social Impact Bond 〜 クラウドファンディングのさらなる可能性
June 10 , 2011 10:24
Ikuo Ogawa   |
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 以前、このコラムで「Kickstarter」について詳しく紹介したことがあるが、日本でも「READYFOR?」や「Campfire」などクラウドファンディングあるいはマイクロパトロンプラットフォームと称されるサービスが立ち上がってきた。

 これらのサービスのスキームを見ると、ほぼ Kickstarterと同様にあるプロジェクトを企画している人たちに対して、そのプロジェクトに共感を覚える人たちが、そのプロジェクトの成果物あるいは副産物(サービスの享受も含む。ここでは、Outputと総称しよう)の取得の権利を購入するというスタイルをとっている。そういった意味では、やはり以前解説したグルーポンの仕組みにも近い。

 これらのスキームはガジェット製造に向いているという記事があったが、プロジェクトのOutputとしてのモノ・体験を前提としているという意味で、その通りだと思う。

 ここで考えてみたいのは、それとは別のクラウドファンディングの可能性についてである。すなわち、モノ・体験といったOutputを前提とするのではなく、Outcomeを前提にしたファンディングの可能性だ。

 実のところ、この「Outcome」という単語は日本語に訳しにくい。「英辞郎」で調べてみると「結果、結末、成果、所産」となっているが、“何らかのプロセスの結果を成し遂げられる状態”という意味合いで考えてもらえればよいかもしれない。と、概念的な話をしてもわかりにくいだけなので、実例を紹介してしまおう。


Social Impact Bond :公的機関を巻き込んだファンディングのスキーム

 「Social Impact Bond(以下、SIBと略)」というのは、イギリスの Social Financeという会社が提供しているファンディングスキームだ。Bondであるから債権による資金調達であるが、ちょっと乱暴だが、ファンドとくくってしまおう。要するに、投資家らからお金を集めて特定の目的に使うための資金調達の仕組みだ。

 通常、ファンドは投資対象の値上がりを見込んで投資し、一定期間後に得た収益を投資家にリターンとして返す。つまり、リターンの基準は投資対象の収益率である。また、上述のクラウドファンディングサービスの例であれば、投資対象の活動によるOutput(を享受する権利)がリターンとなる。

 しかし、SIBは、あるOutcome−事例として挙げられているものでは、再犯防止率−をリターンの基準とする。すなわち、投資対象となる活動の結果得られた状態(Outcome)がそのリターンとなっているのである。では、金銭を提供した投資家に何を返すかというと、Outcomeによって削減された地方自治体や公共機関の活動費の一部を受け取り、配当の原資とするわけである。

(※Social Financeホームページ上の図をもとに作成)


 Social Financeが最初に実施した軽犯罪者の再犯防止の例でいうと、出獄した軽犯罪者が再犯を行うと、その保護観察の費用、警察に関する費用、刑事裁判の費用などなど再犯を行ってしまったがゆえに発生する公的機関の費用はかなりの額にのぼる。もちろん、それらには税金が使われている。

 各機関が再犯防止をする活動をすればいいのだろうが、その効果に関しては不確定であったり、実効性を求めると複数機関をまたがった活動にする必要があったりして、公的機関では積極的に取り組みにくい。そのため、税金による支出は抑制したいが、防止をしないと費用を削減することはできず、しかし、その防止ができないため費用がかかり続け、税金の支出は減らないという構図になってしまう。

 その一方で、再犯防止活動を団体は存在するが、資金難のため、その活動範囲が制限されていたりするわけである。投資家からこれらの団体の活動資金を集め、Outcomeが達成できたら、公的機関から費用削減分の支払を受け、分配を行う。

 これがSIBの仕組みである。


SIBの仕組みとクラウドファンディングの親和性

 このスキームが満たしているそれぞれのステークホルダーのメリットに注意してみよう。

 まず、公的機関はノーリスクである。うまくいったら、削減費用の一部を支払えばよい。うまくいかなかったら、支払う必要がない。次に支援団体は、活動費が提供されるので、存分に活動ができる。支援対象は言うまでもないだろう。問題は投資家であるが、ファンドと考えればリターンの実績次第。最初は社会性に訴えるしかない、と後述するSocial Financeのドキュメントでも触れられている。

 こう書くとすばらしいスキームのように見えるが、実際のところOutcomeの設定はかなり難しいことが予想される。また公的機関や投資家、活動団体などステークホルダーは多様であるだけにその調整も時間がかかるだろう。対象領域に関する知見もかなり深くないとそもそも設計する自体困難である。

 しかし、それだけの困難がありながら、なぜSIBのような仕組みが考えられたのだろうか。その背景について、「Towards a new social economy」という、Social Financeの提供しているドキュメントから引用してみよう。

Britain’s social economy is changing. As social needs become more diverse and, in places, acute there is increasing recognition that often the most effective services are those that are tailored to local needs.

----------------------------------------

イギリスの社会経済は変化を続けている。社会的ニーズはどんどん多様化し、所々深刻化するにつれ、最も効果的なサービスは、ローカルなニーズに合わせられたものだという認識が増えてきている。


 つまり、公的機関が税金で画一的に提供するサービスは非効率になっており、ニーズを感じられるくらい地域に根付いて設計されたサービスが重要になってきているということである。その一般的な問題に対処するためのSIBのスキームであり、公的機関における市民サービスを民間にアウトソースするということを超えて、民間の課題解決能力をフルに使うためのスキームということができる。

 さて、このような背景から、クラウドファンディングとの親和性が見えてくる。すなわち、クラウドファンディングは活動をアピールすることで、その活動に対する共感を、ある程度、前提にしている。その身近さを延長し、自分が欲しいもの/体験してみたいことということから、例えば、自分が住んでいる環境をこんな風にしたいということに置き換えてみることができるのではないだろうか。

 自分たちに身近なものであるから、それを改善する活動に資金を投じる。そのための寄付でもいいかもしれないが、投資や融資などの自分たちの資金運用の手段として、そうした改善活動に資金を投じられるようになるのも有意義であるだろうし、より積極的にその成果(Outcome)に関心を持つことにもつながるのではないだろうか。そうすると、先ほど触れた投資家の社会性に訴えるという問題も、ある程度クリアできるように思える。

 もちろん、期間の設定やOutcomeの定義、Outcome達成による削減費用は投資額に見合うのかという設計上の問題は山積みである。また、購入ではなく、投資(融資)にしてしまえば、法的問題もあるだろう。しかし、それらの問題を一つずつ解決していくことで、そこには多様な可能性の領野が広がっているように思えるがいかがだろうか。


(出典)
購入と寄付の境界線 〜 Kickstarterに垣間見る境界線のゆらぎ(VentureNow)
グルーポン系サービスをECとして捉えなおしてみる(VentureNow)
クラウドファンディングが生み出すガジェットの未来(Startup Dating)
Towards a new social economy: Blended value creation through Social Impact Bonds

インターネットビジネスの種 by Ikuo Ogawa
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