Home News Opinion DataBase VentureNow 300 Event Release
Home - column - インターネットビジネスの種 : 「デコもじ」とプライベートコミュニケーションの未来
| 新着記事 | Columnist | Opinion |
「デコもじ」とプライベートコミュニケーションの未来
August 31 , 2010 6:48
Ikuo Ogawa   |
このエントリーをはてなブックマークに追加

 ブログサービスを展開しているシーサー株式会社が、「デコもじ」という Web フォントサービスを提供している。Web フォントとは、Web サイト上の特定の箇所に自分の指定したフォントを使用できるというサービス。「デコもじ」のサーバにフォントデータを取りに行くため、インストールや設定等の必要がなく、気軽に使えるというところが特徴だ。もともと Seesaa ブログ専用に提供していたサービスを大幅リニューアルして、今年の5月から一般の Web サイトでも使えるようにしたものであり、サービスとしては全く別ものという位置づけらしい。(シーサー、個人ブログやWebサイトで適用できるWebフォント「デコもじ」)。

フォントという存在は、パソコンやモバイル機器を使う上であたりまえすぎてあまり気にすることも少ないように感じる一方で、どうしても文字ベースになりがちなネット上のコミュニケーションでは読み手に対して大きな印象を与えるものであるともいえる。そこで、文章の中身ではなくその見栄えとネット上のコミュニケーションの関係について、少しだけ考えてみよう。


インターネット黎明期でのコミュニケーション

 いきなり個人的な経験の話で恐縮だが、eメールに始めて触れたとき、その表現形式としてのフォントについて気になったことがあった。90年代の前半であろうか。パソコン通信が全盛で、名刺に eメールアドレスを書くことが始まりだした頃の話だ。eメールの何が気になったかというと、その表現形式が受け手に依存してしまうということだ。つまり、どんなフォントで文章を読まれるかは、受け手のメーラーの設定に依ってしまう。明朝体で読まれるのか、ゴシック体で読まれるのか、あるいは、もっとファンシーなフォントで読まれるのか、それを送り手は制御することができない。もちろん、文章の文字列の並びは送り手が指示するのだが、文章を伝えるということは、文字列の並び以外の要素も大きいのではないか。送り手が受け手の読むフォントを指定できないことで、送り手の意図していない読まれ方をしてしまうのではないか。そんな疑問が頭をよぎったのである。

それまでの遠距離でのコミュニケーションは電話(もちろん、固定電話)か手紙だった。電話はそもそも音声なので、対面には及ばないまでも話すときの抑揚やテンポなどで話す内容へのニュアンスが伝えられる(伝わってしまうともいえる)。手紙は、筆跡鑑定や書道という分野があるくらいで、ある程度、その筆跡で書き手の意図が表現される。しかし、eメールでのコミュニケーションでは、それができない。そこに疑問が感じられたのである。

いまになってしまえば、そんなことを気にしたことすら忘れてしまうくらい、ネット上でのコミュニケーションはあたりまえになって、フォントが限られており、その選択が基本的には受け手の判断に委ねられていることもほとんど気にされていない思う。しかし、文字列の並び以外の要素が、受け手に取って何らかの副次的な影響を与えるということ自体は変わっていないはずだ。


ガラパゴスでの進化の一変種

 フォントそのものではないが、文字列の並び以外の要素がネット上でのコミュニケーションに影響を与えることの一つの証左が、いわゆる「デコメ」(※)の存在だ。技術的には、デコメは単なるHTML形式のメールであり、さして画期的というわけでもなさそうだ。にもかかわらず、その市場は大きく、またいまも堅調な伸びをみせている。

総務省の「モバイルコンテンツの産業構造実態に関する調査」によると、デコメ(報告書内では「装飾メール市場」)の市場規模は、2009年で 228億円であり、2008年との比較で 33%の伸びとなっている。無料のデコメ素材も多く流通していることを鑑みると、ユーザにとってネット上で通信する際の文字列の並び以外の要素に大きなニーズがあることを示しているといってもよいだろう。


文字列の並び以外に副次的な意図を伝える要素としては、デコメ以外に「顔文字」に言及することもできる。こちらは市場を形成しているわけではないので、その浸透度を測るのは難しいが、ネットコミュニティや 2chなどの掲示板を初めとして目にする機会も多いといえる。また、インスタントメッセンジャーの機能として顔文字の一種であるスマイリーアイコンが提供されている場合も多い。

いずれにせよ、注目すべきなのは、よりプライベートなコミュニケーション、言い換えれば、文字列の並びとして伝達される内容もさることながら、つながっていることを表現したい場合や、文字だけでは表現しにくい感情を伝えたい場合に、より多く使われる傾向が強いことだ。日本のケータイでの課金しやすさという前提が合ったにしても、ケータイの、特にケータイメールという、よりプライベート性の高いと考えられるツールでデコメが活況を呈しているのはそのせいだろう。そして、日本でのケータイインターネットがパソコンのインターネットからは、ある程度、切り離して進化してきたということに、デコメの活況の一因もあると思われる。


ガラケーからスマートフォンへ

 さて、いまさらいうまでもないが、iPhone や Android などのスマートフォンの普及が進んでいる。とはいえ、まだこれらのツールの活用は感度が高い層が中心であり、一般に浸透してくるのはこれからであろう。その阻害要因のひとつと目されているのが、ケータイメール(いわゆるキャリアメール)のスマートフォン上での利用である。もちろん、各通信キャリアの思惑もあるだろうが、いままでのケータイメールが使えないためにガラケーからスマートフォンへの切り替えを躊躇する層も多いとされている。その理由のひとつと考えられるのが、デコメや絵文字の利用である。実用主義的に考えれば、それが阻害要因になるとは考えにくいが、これまでの考察を鑑みれば、モバイルに対してよりプライベートなコミュニケーションを期待する層にとっては大きな要因となるだろうこともうなずける。

よりプライベートなコミュニケーションがメインの「電話」から進化したガラケーに対して、スマートフォンはノートパソコンや PDA などから進化しており、そのネットワーク上の位置づけもケータイキャリア内のプライベートネットワークからの進化というより、インターネット接続機器をモバイル化するという方向性を持っている。要するに、同じ「メール」というツールとしても、ユーザからするとその位置づけは微妙に違う。一般化すれば、これが、パソコン上のWebサイトとケータイサイトが違ったフレーバーを持つことの一因であるともいえる。

進化の道筋が違うとはいえ、スマートフォンもモバイル端末としてはガラケーとほぼ同等な位置づけになってきている。その場合に、デコメに相当する副次的な意図を伝えるための機能はどう進化していくのだろう。これがここで提起したい問題となる。

ケータイキャリア各社は、ドコモのspモードの導入を初めとして、ケータイメールをスマートフォンで利用するためのサービスを打ち出している。それに伴い、デコメや絵文字に相当する機能も提供されることになるだろう。iPhone 上のサービスとしても、スマイリーメールや PAGMail、デコメリーといったデコメが使えると銘打ったサービスが提供されてきている。いずれも、ガラパゴスで進化を遂げたデコメや絵文字によるコミュニケーション形態を、そのままスマートフォンに移植していこうという試みである。

冒頭にあげた「デコもじ」のサービスを見て感じたのは、スマートフォンがパソコンで使われているインターネットをモバイル化するという方向性を持っているのであれば、デコメからさらに発展した表現形式が提供されて行くことも可能になって行くのではないだろうかという予感である。既述のようにデコメは HTML メールである。これに対して、より簡単に自由にフォントが変えられるという環境を作れると、より表現の可能性は広がる。ぱっと見、地味な変化に見えるが、そのインパクトは想像以上に大きいのではないだろうか。


デコメ
正式には「デコメ」は、ドコモの登録商標である「デコメール」の略として使われ、au やソフトバンクのケータイではそれぞれ「デコレーションメール」「デコレメール」と称される。ここではそれを総称して「デコメ」という表現を使わせていただく

インターネットビジネスの種 by Ikuo Ogawa
Social Impact Bond 〜 クラウドファンディングのさらなる可能性 (6/10)
quirky 〜 アイデアと貢献に値段をつける試み (6/01)
「ideaswatch」 〜 アイデアをみんなで磨くというアイデア (4/13)
more...
MORE STORIES IN COLUMN
Facebook×環境マーケティングの事例紹介 〜FBを問題提起する過激なものも (9/12)
WordPressを使ったFacebookページの作り方 (9/08)
シリコンバレーで事業を起こすことの意味(2) 〜 Jannovation Week 2011 (9/06)
more...
COLUMNIST


more...
この記事へのコメント
Home - column - インターネットビジネスの種 : 「デコもじ」とプライベートコミュニケーションの未来
           
Venture Nowをメールで購読することができます。未上場ベンチャー企業の各種M&A、ファイナンス情報や新サービス・テクノロジーの発表などといった最新ニュースを2回/日配信しています
メールサービスのご案内・登録情報の変更・解除等は こちらをご覧ください
転職ならen 派遣ならen
セントラル短資FX
Venture Now. に掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。
| サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク | 広告掲載 | 会社案内 |
Copyright 2011 Venture Now . All rights reserved.No reproduction or republication without written permission.