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このところ、モバイル端末に関する話題に事欠かない。言うまでもなく、iPhoneやAndroidなどのスマートフォンの登場により、モバイル端末の表現力が増し、あらためてモバイル端末でできることの可能性が模索されているということがあるのだろう。モバイルであることの重要な特性の1つは、その名称のとおり、「持ち運べること」にある。そこから、「foursquare」や、以前取り上げた「コロプラ」などのモバイル端末ユーザの位置情報を活用したサービスが生まれ、多くの人に利用されている。ただ、新しいテクノロジの常ではあるが、その話題性からも、エンタメ系のサービス利用が先行しているようにみえる感は否めない。そこで、思いっきり実用性にフォーカスしたサービスを紹介してみる。そこから、あらためて、モバイルの特性を検討してみたい。
「身近なニーズを満たすことに特化した『超店舗検索』」
「超店舗検索」は、そのホームページ上で「あなたの生活を助ける"やさしい"携帯サイトです。 携帯電話のGPSを使って、ワンクリックで"いつものお店"が検索できます。」と紹介されている。画面のスナップショットを見ていただければわかるとおり、ファストフード店やファミレス、漫画喫茶やコンビニ、さらにはラブホまで、見事に大学生が必要そうなところが並んでいる。携帯でサイトにアクセスし、リンクをクリックするとGPSが作動、現在の位置周辺の店舗が一覧される。一覧された店舗を選ぶと、GoogleMap上に店舗の位置が表示され、店舗の詳細情報が閲覧できる。主要な機能はそれだけである。
しかし、そのシンプルな機能にもかかわらず、かなりの精度でモバイルの特性を活かしたサービス設計がなされている。以下、3つほど特徴をあげてみる。なお、以下の記述は、「超店舗検索−大学生が開発したケータイ検索サービスの発想とこだわり」(※INTERNETmagazine2.0)というインタビュー記事を参考にさせていただいた。

「特性1:すぐ使えること」
モバイルの「持ち運べること」という特性から引き出されるのは、すきま時間の活用だとはよく言われる。いつも手元にあるということから、強いニーズを感じた際やちょっとしたひまつぶしをしたいというような場合に使われる傾向が強い。サイトの利用傾向も、PCのように様々なページをサーフィンするような使い方よりは、目的のサイトやページにアクセスし、すぐに購入なり情報取得なりのアクションを起こす使い方が多いと考えられる。そういった「すぐに使えること」は端末の起動が早いという条件だけにとどまらない。モバイル端末を取り出し、起動し、サイトにアクセス、情報を吟味、目的を果たすという一連の行動に即時性が要求されることになる。
『超店舗検索』では、GPSにより自分の周辺の店舗情報を得たいという特定の目的に対し、ほぼ1クリックで到達することができる。近くの店舗情報が欲しいという強いニーズへの対処であるために、検索結果を複数ページ見ていくことも少ないだろう。そういった意味で、「すぐ使える」サービスとなっている。また、URLにも特徴がある。URLは、mada.amであるが、これは、携帯電話の英字モードで、「6232126」と押していくと入力できる。この辺りも、「すぐ使えること」へのこだわりが現れているといえるだろう。
「特性2:選べること」
モバイル端末の難点のひとつは画面の小ささにある。これは最近のケータイ端末やスマートフォンで幾分大きくなってきたが、ポケットに入るサイズという物理的な制約を考えた場合、避けようがない条件となる。画面の小ささゆえの情報量の制限を克服するためには、その限られたスペースでいかに目的に適(かな)った情報を集約して表示するかが重要だ。
目的を「近くの利用できる店舗を探すこと」にターゲッティングしている『超店舗検索』では、営業時間の情報がかなり重視されており、ユーザが検索する時間帯によって、営業時間の表示が変化する。PCでは、様々な店舗を比較検討して行き先を決めるという使い方をするだろう。それに対し、モバイルで重要なのは、自分が狙った店舗がどうかという情報だ。強いニーズがあるからこそ、選択の条件は明確であり、どちらかといえばネガティブチェックになることが考えられる。つまり、自分の持つハードルが最低限クリアされれば選択可能になる。この条件の違いが、選択の手がかりとなる表示項目の違いにも現れてくることになるだろう。
「特性3:利用シーンが明確であること」
モバイル利用において、ユーザの位置や操作する時間が重要視されるということは、それだけユーザのリアルな環境が反映されるということでもある。つまり、ユーザの置かれた物理的な時間や空間から生じるニーズがモバイルサービスへの要求に直結しやすいということだ。これが「強いニーズを感じ」やすいことの理由となる。ユーザがリアルな環境にある場合にどのようにそのサービスを使うのか。そのとき、どんな状況にあり、どのような結果を求めているのか。そういった利用シーンが明確になればなるほど、いざというときに使いやすいサービスになり、ユーザの満足度も高まることになる。もちろん、これはPCで使うサービスにも同じことがいえる。しかし、PC上のネット環境では、比較的PCのデスクトップで完結する傾向にあるのに対し、モバイルでは生活環境との結びつきが強くなる傾向がある。そこに違いがある。
『超店舗検索』のメニューをみていると、大学生が実際に困っている状況が目に浮かんでくる。お店に入りたいという気持ちが透けて見えるような、そんな利用シーンの明確さがある。これは、このような状況になると、「あ、あれを使ってみよう」というサービスの想起と結びつきやすいということに通じてくる。つまり、数多あるサービスの中でのマインドシェアを取りやすくなるということになる。
「『超店舗検索』の課題」
「超店舗検索」を題材にモバイルの特性について考察してきたが、課題も挙げておこう。
「超店舗検索」自体がどこまで使われているのかの情報は、残念ながら入手できていない。こういったサービスの問題として、まず使ってみないと分からない、ということがある。当然のことながら、困ったときに使ってみた効果を得て初めて、サービスに対するロイヤルティが生まれる。では、その困ったときをどう捉えて利用を促すか、となると、かなり難しい。リアル環境で使われることを考えると交通広告等が効果的なのだろうが、浸透させることまで考えるとかなり資本力が必要だ。とすると、友人などが実際に使っているというのを見せる、あるいは、クチコミでサービス認知を流通させるという手段をとることが有効になりそうだ。
もちろん、マネタイズの問題もある。ユーザ課金にするのか、クーポンなどの集客目的の広告収入にするのかなど、本格展開するのであれば、意思決定が必要になるだろう。
「モバイルの新サービスの可能性はスマートフォンだけのものではない」
これまで挙げた特性は、スマートフォンであっても、いわゆる日本のガラケー(以下、ケータイ端末と呼んでおく)であっても、共通の特性といって良いだろう。最近、新サービスとして目に触れるのはスマートフォンのサービスが圧倒的に多いようだが、インターフェースの違いをおけば、サービス特性はそれほど変わらないはずだ。もちろん、そのインターフェースの違いが大きいという意見もあるだろう。それは否定できないが、前回のコラムでも触れた「CookPad」のようにケータイ端末でも十分な収益を上げている例もある。
少々、冷静に数字を見つめてみよう。日本での携帯インターネット契約数は、2010年4月末時点で、約9,300万人である(※電気通信事業協会調べ)。それに対して、同時期のiPhoneとAndroidの端末は、約150万台程度とされている(※AdMob調べ)。もちろん、携帯インターネットに契約しているからといって、全員が使っているわけではない。しかし、仮に3分の1としても約3,000万人。スマートフォンユーザが年々倍増したとしても、それを抜くのは5年はかかる計算になる。
同語反復だが、米国にはケータイ端末(ガラケー)はない。従って、iPhoneやAndroidなどのスマートフォンのインパクトが直接響く。それに対して日本には、既に普及しているケータイ端末が存在している。もちろん、スマートフォンの革新性や操作性は否定すべくもないし、始めから英語圏のユーザをターゲットにしたり、話題性という戦略としてスマートフォンのサービスを強調していくのもひとつの手段だ。しかし、より多くのユーザに利便性の高いサービスを使ってもらおうと考えるのであれば、やはり無視できないマーケットだと考えるべきではないだろうか。
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