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「リアルな農作物と結びついた農業系ソーシャルゲーム」
農業系のソーシャルゲームというとmixiの「サンシャイン牧場」を思い出す方も多いだろう。説明するまでもないかもしれないが、「サンシャイン牧場」は 480万人あまりのユーザを擁するソーシャルゲームであり、mixiのソーシャルアプリとしては出世株である。しかし、ここで紹介したいのは、リアルな農作物と結びついた農業系ソーシャルゲームである。「サンシャイン牧場」はあくまでネット上のゲームアイテムとして農作物(や牧畜など)を育てて行くのに対し、ゲームと連動した形でリアルな農作物を手に入れることができるゲームがいくつか登場してきている。
ひとつは、アエリア(ヘラクレス:3758)の子会社のAMEとハナツキが運営するmixiのソーシャルアプリ「農力村」。もうひとつは、エルディの運営する携帯アプリ「畑っぴ」だ。ほかにも農作物の通販系の会社がそういったゲームを用意していると聞く。共通するのは、ゲーム中でゲームアイテムとしての農作物を育てるだけでなく、その結果、実際に育てた農作物が手元に届くという点だ。

「農業に対する関心を高めることができる」
そもそも農作物を育てるという作業は地道な作業である。収穫までに時間がかかる。日々の世話も大変である。仲間と一緒に作業の進捗や課題を共有していくというソーシャル性の利点、携帯などで時間があるときに世話ができるというモバイル環境の利点を考慮すると、農業系のソーシャルゲームが流行する素地は用意されているということがいえるだろう。しかし、それとリアルな農作物を結びつけることにどんなメリットがあるのだろう?
ひとつは、農業の危機的な状況に対する関心を喚起するということがある。日本の農業自給率の話題が様々なところで取り上げられているが、少なくとも日本において農業という産業自体が厳しい状況に陥っている。農業系のソーシャルゲームによって、農業という活動自体への理解を深め、ひいてはそれらの問題への社会的な関心を高めるということを狙うことができるのかもしれない。
mixiアプリの「農力村」では、もともとWeb上で田んぼのオーナー制というサービスを提供している。これは米作農家に対して面積単位で契約し、収穫されたお米を1年間発送してもらう権利を提供するというサービスである。権利を買うと同時に、定期的に農家からの生育状況が共有され、稲が育って行く様子を自分ごととして捉えることができる。ただ店頭で売られている商品を購入するというのではなく、稲が育つ様子も含めて購入してもらうわけだ。それにより、ユーザの農作業に対する関心を高めることができるのだろう。
「農業は投資性の強いビジネスモデル」
別のメリットも考えられる。農業をビジネスモデルとしてみてみると投資性の強いモデルであることに気付く。種や苗を購入して(あるいは前収穫時期から一定量保管しておき)、数ヶ月の作業を経て収穫。それから販売し、最初の投資を回収するというモデルになるからだ。生産面では、収穫時期はほぼどの農家でも同時期になり、その収量は天候などの外部要因に左右されがちである。また、販売面では、その鮮度の問題から一定期間内に売りさばく必要があり、農協や小売の決める規格に沿ったものしか流通経路にのりにくいことから、規格外品の発生というかたちで、歩留まりが悪くなるリスクがつきまとう。
投資性の強いビジネスモデルであることに着目すると、解決策はファンドの形態をとることである。つまり、種や苗の購入時期に消費者が一定金額を投資し、その収穫物で配当を受け取るという形態である。この例としては、農作物ではないが、ミュージックセキュリティーズが運営する日本酒ファンドがある。農業系ソーシャルゲームが、消費者による先行投資を促すことが出来るようになると、この方向の問題解決の糸口になる可能性もある。
「生産サイドとのコミュニケーションの活性化」
もうひとつ。農業の問題は、生産サイドと消費サイドの距離が遠いことだ。消費者を握っている流通・小売の力が強くなっていることもあり、生産サイドにはどういったモノを消費者が求めているかという情報が少ない。また、農作物は収穫までの時間がかかるため、そもそも消費者の需要の変化に合わせた柔軟な生産物の選択がやりにくい。その結果、生産物が画一的になり、量的な指標だけが基準となり、価格勝負に陥りやすくなっている。
現在のところ農業系ソーシャルゲームは、消費者間でのコミュニケーションが重視されている節があるが、もし生産サイドとのコミュニケーションを活性化することができれば、こういった方向の進化もありうるだろう。
「農業系ソーシャルゲームの分水嶺」
とはいえ、いずれの方向も実際に成果が出てくるまでには、様々な困難があるだろうことは想像に難くない。農業は政策的な側面からの影響や既存の制度的な課題も根強い。農業系ソーシャルゲームのユーザとなりやすく、消費者の多い都会と生産者の本拠地である地方という対立軸を乗り越えることも課題となるだろう。しかし、おそらく最大の課題は、量の問題である。農作物の消費が極めて日常的なものであるからこそ、その生産/消費量は莫大である。農業系ソーシャルゲームが農業という問題の中でインパクトをもたらすためには、そこで農作物を提供する量の面で存在感を示す必要がある。ここが、リアルな農作物を提供する農業系ソーシャルゲームが、実際に社会的問題の解決に寄与するのか、数多ある暇つぶし系ゲームジャンルの一つになるのかの分水嶺となるだろう。
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