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「ネットビジネスと広告の関係」
ネットビジネスと広告は切っても切りはなせない関係だ。多くのWebサイトが広告を掲載している。ブログのお小遣い稼ぎ的なものから、ニュースメディアなどの運営していくために必要な広告まで。クリス・アンダーソンの『FREE』でも、広告モデルはネットサービスの無料での提供形態のひとつとして示されている。
とはいえ、ネットサービス運営に重要な役割を果たすネット広告は、ユーザにとっては邪魔者となる場合もある。記事の途中に容赦なく割り込んでいるテキスト広告や、サイトの内容とはほぼ無関係の横でチラチラと落ち着かなく動くレクタングル広告など、逆効果としか思えないものも散見される。もちろん、ユーザが何の金銭的な支払いもすることなく利用している以上、広告を見ることは支払うべき代償なのかもしれない。しかし、もう少しましな関係は作れないものなのだろうか?
「マス広告の持つ広告効果の不明確さという制約」
その昔、まだインターネットが大学間のネットワークにすぎなかったころ、広告と言えばマス広告を指していた。その名の通り、テレビや新聞、雑誌、ラジオなどのいわゆるマス4媒体と言われるメディアの広告だ。マスプロダクトの存在を大衆に認知させ、意欲をかき立て、購買に結びつけるためにメディアに掲示されるクリエイティブ。それが広告だった。もちろん、いくぶん勢いは衰えたとはいえ、いまでもそれらの広告は健在である。
ただし、マス広告はそのメディア特性上、広告効果は不明確だ。多額の費用をかけクリエイティブを制作し、媒体の広告枠を購入しても、それがどれだけ購入に結びついたかわかりにくい。また、媒体のコンテンツを重視しているユーザにとっては邪魔者として扱われることもあった。しかし、その一方で、これらの制約があったからこそ、クリエイティブの出来映え、媒体との親和性(レリバンシー)が重要視された局面もあったはずだ。
「ネット広告はマス広告が持つ制約を乗り越えた?」
ネット広告は、広告効果の不明確さを払拭するものとして現れた。規模は小さいながらも、CTRという明確な指標をもって現れたネット広告は、支払った費用に対するユーザの反応を如実に捉えることができた。さらに、Overture/Google Adwordsに代表されるリスティング広告は、広告はユーザにとっての邪魔者という観念も払拭したかのようにみえた。すなわち、情報を求めて検索エンジンにキーワードを入れるユーザに対し、キーワードとの親和性(レリバンシー)の高いクリエイティブ(この場合は、テキストと説明文)を提供するのだ。いずれにせよWebサイトの情報を求めているわけだから、ユーザにとっても利便性が高いともいえる。最近は行動ターゲティングと呼ばれる、ユーザのネット上での活動を踏まえた上で、親和性(レリバンシー)の高いクリエイティブを掲示する方式もある。ここに至って、ネット広告は、マス広告が持つ制約を乗り越えたかのようにみえる。それは、近年、ネット広告がラジオ、雑誌を抜く勢いにも明確に示されている。
「ネット広告は媒体との親和性を見失っている」
しかし、この制約を乗り越えたが故に、見失っているように思えるものもある。それが、クリエイティブの出来映えであり、媒体との親和性(レリバンシー)ではないだろうか。ネット広告にとって、出来映えの良いクリエイティブの定義は、CTRが高いことである。広告効果が数値として表されやすいが故に、クリエイティブのユーザに与える影響は置き去りにされている。
媒体との親和性(レリバンシー)も同様だ。コンテンツマッチなどの媒体との親和性(レリバンシー)を強調するものもあるが、それもやはり評価指標はCTRだ。それは、広告がユーザに与える様々な影響を、クリックというユーザのアクションに切り詰める行為であり、指標としての明確さがあったとしても、事象を的確に捉えているとはいいがたい。それは、企業経営を会計利益という明確に数値化しやすい指標だけで捉えようとするのと同じであり、その悪影響はトリプルボトムライン(会計利益だけでなく、社会面、環境面も影響も考慮に入れた経営指標)に関する議論でも主張されている。数値化しやすいというだけでひとつの指標に頼ってしまうことは、その活動の前提となる環境を考慮に入れた際に持続可能な営みにならない。すなわち、ユーザがその仕組みに気付いたとき、広告に見向きもしなくなるリスクが高い。ユーザは、もっと多面的に捉えられるべきだ。
では、どうすればいいのか?
そのヒントが、「The Deck」というアドネットワークにある。
「そもそも何のための広告なのか?『The Deck』のチャレンジ」

「The Deck」は、いわゆるアドネットワークである。ただし、いくつか独特な仕掛けがほどこしてある。まず、アドネットワークとしてのターゲットが明確なことだ。この場合のターゲットは、エンドユーザ製品やサービスの情報を届けるユーザを指す。広告は、広告主の製品やサービスの情報を媒体を通してエンドユーザに届ける仕組みを指すのだから、まずは、エンドユーザのターゲットを明確にしている。その上で、広告主、媒体の双方に制約を課している。媒体には、1PVに1つのクリエイティブしか表示しない。また、クリエイティブはあらかじめ制作されたかなりセンスの良いものに限っている(サイト上で一覧されている)。広告主は、The Deckの運営者が実際に使ってエンドユーザのためになると判断したもののみに限定される。
これらの制約は、通常の広告のスキームで考えると信じがたい。媒体はより多くの広告枠を確保しようとするし、広告主は費用を払うわけだからよっぽどでない限り審査をクリアできないということはない。しかし、それぞれの立場を尊重するあまり、結果的には、エンドユーザ不在のスキームになってしまっていることは否めないだろう。これに対し、The Deckは、広告主のメッセージを適切な媒体を通じて適切なターゲットに届ける、というそもそも広告にとってあたりまえのことにチャレンジしているといえる。
効果測定は重要である。しかし、測定された数値に支配されるとき、数値が表しきれないものはどうしてもこぼれ落ちる。ボリュームを追いかけようと思えば、数値に振り回される。しかし、単にボリュームを増やしていけばそれでよいのか。
そもそも何のための広告なのか?
誰にどう訴求したいのか?
素朴ながらも、あらためて、そんな問いかけをしてみることで、また違った広告のスタイルが見つけられるのではないだろうか。
【訂正】本文中「The Deck」のリンクしたURL(2箇所)に誤りがございました。該当箇所を修正の上、お詫び申し上げます。(5/31)
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