|
最近、位置ゲーというゲームジャンルが登場している。今回はその老舗ともいえる「コロプラ」を取り上げてみよう。コロプラの正式名は「コロニーな生活☆PLUS」だが、その前身の「コロニーな生活」は 2003年に開始されており既に7年近くサービスを提供している。3月末には携帯3キャリアとWILLCOMに加え、iPhone版もリリース。4月にはユーザ数が100万人を突破した。2月のPVが 10億7,200万PVというから、ざっくり計算してもひとりあたり月に約1,072万PV、1日あたり約35万PVというトラフィックだ。

ゲームとしての「コロプラ」は、比較的シンプルだ。ユーザはコロニー(自分の街)をひとつ与えられ、食料、空気、水というリソースを用意して住人を増やしていく。エッセンスだけ取り出してしまえば、それだけと言える。「SimCity」(MAXIS社)などの都市開発ゲームと比べるとユーザが操作できる選択肢はあまりにも少ない。だが、それはメリットになりこそすれ、デメリットにはなっていない。
位置ゲーというだけあって、ユーザの現在地登録はゲームの重要な要素だ。移動することで、ゲーム内通貨である「プラ」が付与され、周囲のユーザとも交信ができる。特にゲーム開始初期はリソースが少ないため、周囲のユーザからの寄付だよりになりがちだ(コロプラには余ったリソースを別のユーザに与える仕組みがある)。それに加え、招待機能もあり、ゲームとしてのソーシャル性も巧妙に取り入れられている。実際には、むしろ、位置登録の機能は、ゲームの進行にあたって必須ではないともいえる。もちろん、プラを稼ぐためには移動するのが手っ取り早いが、アイテム売買や交換などでもゲームを進めることができる。
このゲームが10億PVをたたき出す上で重要なのは、位置ではなく時間要素の方が大きい。コロニーには、不定期になぜか隕石が降ってくる。この隕石が曲者だ。隕石は住人だけでなく、リソースを破壊することもあるため、ユーザは定期的にコロニーをチェックする必要が出てくる。いつ降ってくるかわからないからだ。これは強力なリピート促進ツールとして機能している。
モバイル端末の特性として「mobile=移動性」が真っ先に思い浮かぶが、常に「携帯」しているということも大きな特性のひとつである。細切れの時間でも、いつも所持していることでアクセスが可能になる。では、ちょっとした隙間時間が出来たときに、何にアクセスするか?ここにポイントがある。
話は飛ぶが、「Twitter」の興隆も、実際にはソーシャル要素より時間要素の方が重要なのではないか。既にSNSという有力なソーシャルメディアがあったにも関わらず、Twitterが台頭できたのは、「つぶやき」という形でどんどんメッセージが流れていくからだと考えられる。ちょっとした隙間時間ができたときに、Twitterをチェックするということの習慣化(への圧力)が根底にある。
では、コロプラの位置要素は、あまり意味がないのだろうか?もちろん、ゲームの要素としては重要なフレーバーだ。ただ、それ以上の意味はある。それが顕著にみえるのが、実店舗と提携した「スポンサーお土産」と「コロカ」というサービスの存在だ。もともとコロプラにはその場所でしか買えない「お土産」というアイテムがあるが、これを実店舗からスポンサードされて提供しているのが「スポンサーお土産」および「コロカ」だ。既に提携先は49店舗と拡大しており、集客サービスとして実績をあげている。
コロプラはあまり広告をだしていないので、それに変わる収益源の“単なる集客サービスだ”という見方もできる。ただ、もう一歩踏み込んで考えてみよう。「スポンサーお土産」の中には、「日光・ショコラ隕石餅」といったように明らかにコロプラユーザ向けに用意されたものもある。つまり、コロプラというネット上のゲームが、実際の場所にある実店舗に新たな意味付けを付与しているのである。
AR(Augumented Reality)というと、現実の世界がまずあって、そこに情報を付加すると考えがちだが、ここで起こっていることはその逆である。ネットの世界があって、それが現実の世界に意味付けを行っている。いや、言い換えた方がよさそうだ。ネットで示されていることがソーシャルなネットワークとしてあるのであれば、ユーザ同士のやり取りが店舗なり場所なりの経済的/物理的要素に変化を与えていく、そんな作用の萌芽だとみることはできないだろうか。そんな仕組みがもっともっと現れてくると、位置をシステム要素として取り込むことの意義が明確になっていくだろう。
|