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WIP Japanという翻訳大手の調査レポートによると翻訳市場は、2013年に250億ドルにも達するそうだ。インターネットが先進国だけでなく、全世界にあまねく張り巡らされていくことによって、言語間の壁を越えようという圧力も否応なくかかっていく。また、従来型のマスメディアによる一方向の情報発信ではなく、SNSやtwitterなどのCGM(Consumer Generated Media)やUGC(User Generated Contents)などと称される双方向の情報交換もそのニーズ拡大の底流にある。
もうひとつ、インターネットによる変化として、多くの人が協同するためのプラットフォームを構築することが容易になった。Wikipediaに代表される、いわゆるクラウドソーシングという流れでは、不特定多数の人たちがあるタスクを連携して実行することで、よりQCDに優れた結果を出していくということが、様々な分野で実証されてきている。
そういった流れの中で「翻訳」を捉えた場合に出てくるのがソーシャル翻訳だ。既に、いくつかサービスは提供されている。海外では「myGengo」が有名だが、日本ではTwitterで140transというサービス名で展開しているConyacなどがある。
Conyacは、昨年創業したエニドアというベンチャーが運営している。ちなみに、同社は筆者の主宰するビジネスプランコンテスト『起業チャレンジ』の第2回の最優秀賞受賞者。myGengoがかなり厳密に翻訳者の審査(試験)を行うのに対して、Conyacは原則審査がないというスタンスの違いはあるが、それは各々の事業展開上の戦略オプションなので、ここでは措いておく。
依頼者側にとってみれば、他言語の文書を読むあるいは他言語でコミュニケーションをしようとすれば、機械翻訳を使いつつ自分で他言語を勉強するか、翻訳会社に頼むしかない。なので、諦めてしまう人も多いはずだ。そんなときに、気軽に依頼できるツールがあれば、もっと他言語を操る人とのコミュニケーションも活性化する。そんな諦めを克服する、という問題意識がソーシャル翻訳にはある。
さて、ソーシャル翻訳が壊す“あたりまえ”は、依頼者側だけではない。より重要なのは、翻訳者の潜在的に持つジレンマへのアプローチだ。少なくともいまの日本では、翻訳という作業への期待値が高い。海外文献の翻訳を学者などの高度な知的生産者に委ねてきたという背景もあるのだろうが、そのため、実績がある人には仕事が回るが、実績がない駆け出しの翻訳者やパートタイムの翻訳者はそのスキルを磨く/活かす機会が与えられないという構造的な問題が引き起こされる。
このジレンマを解消する術が、さきほど挙げたクラウドソーシングという仕組みである。つまり、翻訳依頼を受け取れる場に登録することで、自分のペースで、自分のレベルに合わせた仕事を選ぶことが出来る。そこで実績を積むことで、より高度な、より自分の適性に合わせた仕事をすることが可能になっていく。もちろん、既存の活躍中の翻訳者には脅威でもあるかもしれないが、既に実績はあるだろうし、それに伴う品質の違いもあるだろうから、問題ないはず。
このアプローチが成功するか否かは、潤沢な翻訳依頼を翻訳者に提供できるかにかかっている。それは、ユーザが自分が身近に持つ翻訳ニーズが解消できるということに気づくことであり、解消するサービスにアクセスできること。いま、気づいていないのなら、必要ないのでは?と考えられるかもしれないが、翻訳はその後のコミュニケーションや情報分析の前提。すなわち、翻訳がなされないことによって、活動や理解の可能性が制限されていると考えることもできるのである。
翻訳ができるということに気づくことができれば、都度の期待に合ったコスト対効果をもつサービスの選択の問題となる。英語だけじゃない多言語の文書による文化や考え方に触れること、多種多様な人たちとのコミュニケーションをとることが、もっと気軽に可能になるために、純日本風の外国語教育を受け他言語に不自由な筆者としては、この分野の興隆に期待したい。
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