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私は長らく金融業界を渡り歩いてきた。現在は Miewというスタートアップに参画させていただいているが、今回のテーマ「ベンチャーが成功できるイノベーション戦略とは」について、私なりの経験を踏まえた見解を述べさせて頂きたい。
まずは定義を確定しよう。
- ベンチャーの定義:ある事業機会を得ることで急速な成長を遂げる企業
- イノベーションの定義:「技術革新」のみならず、新しい技術や既存にはない考え方/サービスにより、新たな市場(価値)を創造すること
結論から述べたい。ベンチャーが成功できるイノベーション戦略は(1)ニッチ、(2)アービトラージ、(3)ディストラクティブの3パターン以外はほとんどないと言っても過言ではないだろう。
もちろん何事にも例外はある。しかし、ほとんどのベンチャーの成長は上記3パターンで説明できる。
(1)ニッチ
言うまでもなく、ニッチ市場で占有率を高めるパターン。一番オーソドックスな戦略だ。大きくない特定の市場に対して、特殊な技術提供やユーザーの細かい要求に応えることで市場占有率を高めていく。
多くのベンチャーはニッチ戦略により特定市場の占有率を高めて収益率を高めていく。そしてニッチ市場のマーケットリーダーになると今度は横展開のできる市場へと移っていき、さらに収益を高めていく。さらに突き抜けると業界のデファクトになり、世間的にもイノベーションを実現した会社として認識されるようになる。
あのAppleも設立当初はこの戦略を取っていた。日本のネット系で上場した会社の多くはこの戦略を取っている。ただし、ニッチ戦略で難しいのは次のニッチ市場を探し、マーケットとして成立させるということだ。多くのベンチャーは壁にぶち当たる。
(2)アービトラージ
アービトラージは金融用語で「裁定取引」のこと。同じモノでも場所や時間の差異(情報の非対称性)により価格差が生じる現象を活用し、利ざやを稼ぐ手法だ。金融市場では広く一般的に知られている。ベンチャーでのアービトラージ戦略とは、顧客との情報の非対称性を利用したビジネスだ。
代表的なビジネスはアフィリエイトだろう。アービトラージは理論的には時間の経過により、多くの情報のバリューは0に近づいていく。古くは町の不動産屋さんそのものがアービトラージ戦略をとってきた。しかしインターネットの普及により苦境に立たされている。ネットで情報を集約して提供するプレイヤーの出現が原因だ。
顧客と情報の非対称性があり続ける限り、アービトラージは実現できる。日本ではインタースペース社やウェブクルー社が代表的なアービトラージを活用しているベンチャーだろう。
(3)ディストラクティブ・イノベーション
HBSクリステンセン教授の「イノベーションのジレンマ」でも論じられている「破壊的イノベーション」がディストラクティブ・イノベーションだ。非連続的なイノベーション(既存の延長ではないこと)により、新市場を創造する。「新市場を創っていく」というのは「言うは易し、行うは難し」そのものだ。極めてハードルの高いイノベーションである。
最近10年間での代表的な企業は、それこそGoogle、Facebook、直近ではDropboxもコンシューマ向けストレージビジネスで市場を創ってきた。
ディストラクティブ・イノベーションで難しいのは、プロダクトやサービスの良さだけでないところだ。マーケット側が受け入れる体制が整う必要もあり、ファクターが多いため正直言って運も重要な要素になるだろう。
上記3パターン以外の戦略は極端に成功確率が下がる。
例えば低価格戦略やカイゼンによるイノベーション戦略(連続的なイノベーション)等は、資本力がモノをいう。ベンチャーでなくても優位性を確保し続けることは至難の業(そもそも価格優位性はいつかなくなる市場がほとんどだ)。従って、ベンチャーのとるべき戦略ではないのだ。
今まで日本のみならず、海外企業を含め数多くの「ベンチャー」経営陣とお話させて頂いたが、「ベンチャー」企業の経営陣でこのような戦略の重要性を理解されている方は結構少ない(逆に理解されていると投資対象になっていた)。
これら戦略に対する理解度が低い経営者が多い市場の場合、戦略を誤り、売るために低価格に走り、市場がレッドオーシャン化する。結局、急成長できないケースもかなりある。
また、営業代行、開発受託、コンサル会社で業績を積み上げている会社は、レバレッジを効かせたビジネスができず、人月商売から抜け出せないパターンが多い。これを私は「受託の罠」と勝手に命名している。
自社の戦略が上記3パターンに当てはまらない場合、大幅な事業戦略、資本政策、資金管理の見直しが必要だろう。
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