普及の兆しが見えてきたスマホの決済
スマホを中心とした決済サービスに普及の兆しが見え始めている。今回は、スマホの決済サービスの現状と、これからについて取り上げてみたい。
5月、Googleが NFC(Near Field Communication) を使ったモバイル決済サービス「Google Wallet」を発表した。これは、Google 版"おさいふケータイ"とも言えるもので、アプリを起動したNFC携帯を専用端末に近づけることで決済ができるというものだ。日本の携帯電話の世界では特に目新しい話ではないが、海外では未来の決済の姿として話題を呼んだ。
一方、スマホを用いた決済システムとしては、既に「Square」というサービスがある。Squareは、twitter の創業者の Jack Dorsey が立ち上げたクレジット決済サービスで、5月現在、1日あたり300万ドルの取引にまでなっている。
Google版おサイフケータイ "Google Wallet"
Google Wallet は、マスターカードの非接触決済サービス PayPass という既存の決済インフラを利用することで、店側に新たなリーダーなどの導入を不要にしたところが特徴である。PayPass に対応した店舗は、米国では10万以上、全世界で30万以上となっている。また、当初は、ニューヨークとサンフランシスコで試験的に導入され、夏から本格的に展開されることになっている。2012年前半には、欧州の大都市で導入したいという話も出ている。
利用者は、無料のアプリをダウンロードし、Google Wallet に PayPass対応のシティ・マスターカードを登録するか、専用プリペイドカードを任意のクレジットカードで購入する必要がある。また、タッチしただけでは決済されず、安全のために暗証番号を入力する必要がある。
Google コマース担当副社長の Stephanie Tilenius が Google Wallet の会見で強調していたことは、「オープンであること」。APIの提供のみならず、iPhone や BlackBerryのサポートの可能性も残しているとのことだ。当初の店舗パートナーは、トイザラスやサブウェイである。また、決済による手数料は発生しない。
他にも、NFC 非対応端末について決済機能を持つシール型での対応、Google版クーポンサービス「Google Offers」との連携など、単なる決済プラットフォーム以上の展開が予想される。

出典:Google
twitterの創業者が立ち上げた決済サービス "Square"
Square は、専用のトングル型のクレジットカードリーダーをイヤホン部分にさして使うもので、いわばどこでもカード決済ができるものである。大きな特徴としては、個人間でのクレジットカード決済ができる点である。これにより、専用端末の導入やクレジット会社からの承認が降りにくいケースでも、カード決済を提供できるようになっている。
そのような大手が参入しにくい領域を攻めたことが功を奏してか、1日あたりの取引額はサービス開始から15ヶ月経った今年の3月に100万ドル、4月には200万ドル、そして5月には300万ドルと急成長を遂げている。
また、5月にはクレジットカードすらも不要にした電子決済アプリ「Card Case」と、店舗向けPOS・レジシステム「Square Register」をリリース。「Card Case」で「Square Register」に対応した店舗を検索することが出来る。使い方としては、利用者が「Card Case」から対象店舗の欲しい商品を選択し、店舗側が「Square Register」に表示された顧客名を確認し支払いを承認することで、決済が行われる。

出典:Square
Googleにとってのメリット
ところで、「Webのトラフィックを最大化する」ことが至上命題であるはずの Google がリアル、すなわち非ネット分野に参入してきた意図とは何であろうか。
まず考えられるのが、購入履歴情報の取得による、更なる広告のパーソナライズ、ローカライズである。Google はここ数年の間に、Google ローカルなどで位置情報と連携した広告サービスや、商品検索サービス「Google 商品検索」といった、検索対象がWebページに留まらないサービスを展開してきている。
これらのサービス上でユーザに最適な広告や情報を提示するには、通常のWeb検索におけるリスティング広告の場合などと異なり、ブラウザで取得できるページ情報や閲覧履歴だけでは不足である。このようなサービスの実現には、Android のような携帯デバイスに連携可能なプラットフォームと、巨大な広告プラットフォームという、2つのプラットフォームが必要であり、それは Google にしかできないワザである。
そして、Google はリアルをネット化し、彼らの新たな舞台していくつもりなのではないかと思われる。またこれは、Google のビジネスモデルを積極的にリアルにも適用し始めたことを意味する。
スマホの決済の未来
さて、駆け足でスマホの決済を見てきた。「日本のおサイフケータイと同じじゃないか」という声が聞こえてきそうであるが、いかがであろうか。
日本では、携帯電話を使って当然のように自動販売機でジュースが買えるようになっているが、海外ではこれからである。これは、日本のケータイで培ってきたノウハウを海外に広げるチャンスでもある。おサイフケータイをそのまま輸出することはできなかったが、アプリ、サービス、ハード(チップ)など個別については、ビジネスチャンスがあると信じている。
また通貨の流通という点で見ると、Google Wallet のようにAPIがオープン化され、ポイントサービスなどと連携ができるようになることで、仮想通貨の普及も予想される。それはバーチャル通貨や地域通貨だけでなく、世界規模の通貨となり、貨幣の価値そのものを変える可能性をもつ。もしかすると Google が"世界大蔵省"になる日も遠くないのかもしれない。
出典:
Google Wallet - make your phone your wallet(Google)
Square - Accept credit card payments with your mobile phone(Square)
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